2012年9月の「桐陰祭」で筑波大学附属高校2年2組が制作したコーヒーカップ(写真提供・山田先生)

文化祭で遊園地の「コーヒーカップ」型のアトラクションを企画する高校が増えている。「元祖」とされるのが、2012年9月に東京・筑波大学附属高校2年2組が製作した作品。動画がインターネットにアップされると評判になり、今年も全国約40校から問い合わせがあった。当時の中心メンバー、菊入理帆さんと川原俊樹さん(共に大学2年)、担任だった山田研也先生に聞いた。(中田宗孝)

始まりはある女子の熱意

──「コーヒーカップ」を製作した経緯は?

菊入 その年の春、文化祭の企画会議でクラスの女子が発案しました。その子の熱意がすごくて、2回目の企画会議には、コーヒーカップの模型と設計図を作ってきたんです。設計図には、製作に必要なおおまかな材料もすでに明記してあり驚きました。

川原 企画を聞いた時は「できないだろう」と思いましたが、クラスの皆で手順を話し合ううちに「できるかも」と思うようになりました。」

発案者がつくった模型と設計図(写真提供・山田先生)

──製作をどう進めたのですか。

川原 進路説明会で来校した東京大学工学部の教授に相談し、土台部分に単管パイプを使うことや、キャスターの付け方などを助言していただきました。卒業生の建築士にも話を聞きに行きました。

菊入 実際に製作を始めたのは7月から。木材や単管パイプの長さなど、試行錯誤しながら作りました。

川原 コーヒーカップ全体を支える中央部分をどうするかというのも問題でした。100キロのセメントを使えば固定できるなんて案もありましたが、実際には中央部分をそれ程しっかり固定しなくても良かったんです。

山田先生 製作には学校外の方の協力もありました。カップを回すのに重要な単管パイプとキャスターの溶接は、近所の鉄工所にお願いしました。製作費は約12万円。文化祭用の予算では足りず、入学時に集めていたクラス費から出しました。

土台部分の組み立て(写真提供・山田先生)

宇宙をイメージした装飾

──どんな点で苦労しましたか?

川原 組み立ては比較的スムーズにできました。文化祭前日に、それぞれ2人ずつ、合計8人乗れる4基のコーヒーカップが完成しました。

菊入 苦労したのはコーヒーカップの周りの装飾です。コーヒーカップ作りと同時に進めていました。

川原 コーヒーカップの鉄筋の骨組みが露出しているのを目立たないように室内全体を暗めにしようと考えた時に、「宇宙」をイメージした装飾を思いついたんです。

菊入 細かく刻んだ蛍光色の付箋に蛍光塗料を塗り、ブラックライトに当てることで、星や銀河を表現しました。地道な作業の連続で参りました(苦笑)

きらめく星を表現するため、蛍光色の付箋をちりばめる(写真提供・山田先生)

──文化祭当日の様子は。

菊入 あっという間に行列ができて本当に嬉しかったです。2日で約1500名もの方に乗ってもらいました。お客さんからは『誰が作ったの?誰に教えてもらったの?』と質問攻めでした。

動画に反響続々

──ネットに動画をアップしたのはなぜですか?

山田先生 当初は、思い出になればと生徒向けの限定公開でしたが、学校の入学説明会で動画を見せたところ、良い反応をいただけたので、一般公開にしてみました。

──反響は?

山田先生 「作り方を教えてください!」という高校生からの質問が届くようになり、メールで設計図や制作上のアドバイスをしています。来校する学校もあります。今年も40校から問い合わせがありました。工業高校は溶接も生徒が担当したり、鉄筋を使用せず木だけで制作する高校もあったりと面白いですね。当時使用した「キャスター付きの単管パイプ」は他校にレンタルしているんです。

──これから製作する高校生にアドバイスを。

菊入 周りの装飾や文化祭当日の接客にも工夫をして自分たちにしかできない世界観を作る。そうすればコーヒーカップがより際立つと思います。