東京・筑波大学附属高校の1年4組40人が「VRコースター」を製作した。バーチャルリアリティー(VR)技術を用いて、仮想空間でのジェットコースター体験が楽しめるアトラクションだ。9月9・10日に行われた文化祭のクラス企画として披露し、多くの来場者が体験した。(文・中田宗孝、写真・田部翔太)

高速で流れる映像を見ながら、実際のスピードを感じるスリル満点の「VRコースター」

 

猛スピードのトロッコに合わせて映像流す

木製のジェットコースターは、教室前方の出入り口付近から滑り始める。窓際に設けられた2つのカーブを曲がり、教室後方の出入り口へと向かう直線を滑走。全長約15メートルのコースだ。

搭乗者はトロッコに乗り、「VRゴーグル」を装着してスタートを待つ。「VRの世界へようこそ! 3、2、1、いってらっしゃーい!」。クラス全員による元気なコールに合わせて、約1メートルの高さからトロッコが急降下。同時にVRゴーグルに映像が流れ出し、近未来的なビルが立ち並ぶ仮想空間の中を左へ、下へと猛スピードで滑っていく。

視界に飛び込んでくる迫力の映像と、コースを走るトロッコの体感速度が合わさり、スリル倍増だ。乗車を終えた人からは「すごい!」「ビックリした!」といった声があがった。

仮想空間をゲームで制作

VR制作は企画代表の齋藤遼太郎君ら6人のVR班が担当。ブロックを積み上げて建物を作れる人気ゲーム「マインクラフト」を使い、仮想空間のコース作りに励んだ。「教室内でのジェットコースターはコースが短い。VRを導入することで、まるで長い距離を移動しているかのような感覚を楽しんでもらえる」(齋藤君)

 
VRゴーグルを装着すると流れる映像。左右で違う映像を映すことで、立体的に見える(学校提供)
 

 

体験している人の目の前には立体的な映像が現れる(開発中の画面、学校提供)

ジェットコースターの設計や制作は、木材班の黒田諄人君、石井千温君、佐々木悠太君を中心に進められた。教室内にどんなコースを作るかの構想を黒田君らが練り、木材班で木材を加工してレールを組み上げていった。VRコースターは、映像と走行するトロッコの動きを連動させるのがポイントとなる。数え切れないほど試走を重ね、タイミングを合わせていった。

レールの下に木材の補強を加えて強度を高めた

廊下には長蛇の列、待たせた客を笑顔に

「教室でも遊園地のジェットコースターに劣らないものができる!」(齋藤君)。そんな思いから始まったVRコースター制作は、主に夏休みを費やして約1カ月弱で完成。文化祭当日は、カーブやゴール地点には必ず人を配置し、走り出す前に毎回「第2(カーブ)良し、ファイナル(ゴール)良し」と声を出し、安全確認を徹底した。

白衣を着た生徒がテーマパークのスタッフを意識したコミカルな乗車案内を行った

教室の外には評判を聞いた客の長い列ができていた。アテンド係の生徒たちは、順番待ちの人にトロッコの正しい乗り方や手荷物の置き場などを呼びかけた。生徒同士による漫才の掛け合いを交えながら注意事項を伝え、待ち時間に客が退屈しないよう工夫した。

2日間で約300人が乗車した。主に木製コース作りに携わった西村朱央さんは、クラス企画を成功させて涙を浮かべた。「何より安全に終えられて安心しました。お客さんたちの満足した顔をたくさん見られて良かった」

VRジェットコースターを成功させた筑波大学附属高校1年4組