洛南高校(京都)3年時の織田記念国際陸上で10秒01をマークした桐生祥秀(2013年4月、白井邦彦撮影)

日本初「10秒の壁」破る

陸上男子の桐生祥秀(21)=東洋大=が福井市で行われた日本学生対抗選手権の100㍍決勝で9秒98の日本新記録を樹立、日本人で初めて「10秒の壁」を破った。国際陸上競技連盟によると、桐生は9秒台をマークした126人目のスプリンターとなる。

100分の1秒まで表示する現行の電気計時では1968年に米国のジム・ハインズが9秒95で走り、世界で初めて10秒を切った。日本人は49年遅れで悲願の9秒台突入を果たした。日本陸連の科学委員会は、このレースで桐生の最高速度は秒速11.67㍍、100㍍を47.3歩で走ったなどとする分析データを発表した。

電気計時で遠のいた夢

日本勢の9秒台への挑戦は戦前までさかのぼる。32年のロサンゼルス五輪で6位に入り「暁の超特急」と呼ばれた吉岡隆徳は〝ロケットスタート〟を武器に35年に当時世界タイの10秒3(手動計時)で走った。また、東京五輪代表になった飯島秀雄は64年に10秒1を記録している。しかし国際陸連は75年から100分の1秒まで表示し手動に比べてタイムが遅くなる電気計時を採用、77年には手動計時は世界記録として公認されなくなり、9秒台の夢は遠のいていた。

9秒台に迫る選手ずらり

現在は、桐生のほかにもサニブラウン・ハキーム(18)、ケンブリッジ飛鳥(24)、山縣亮太(25)ら9秒台に迫る選手がそろっている。ただ、9秒58の世界記録を持つウサイン・ボルト(ジャマイカ)が3連覇したリオデジャネイロ五輪では28人の9秒台スプリンターが挑戦したが、決勝戦には8人しか進めなかった。世界と戦う上ではトップとの隔たりはまだ大きく、3年後の東京五輪に向けて一層のレベルアップが求められる。