放送部門で優秀賞を受賞した松本深志高校放送委員会制作班の前川素絵さん

第41回全国高校総合文化祭(みやぎ総文2017)の放送部門(8月、仙台市)で、オーディオピクチャー部門(静止画と音声を合わせた作品)の優秀賞に前川素絵さん(長野・松本深志高校放送委員会制作班2年)の作品「40年目のホームルーム」が選ばれた。いまもホームルームを行う同校の卒業生を描いたものだ。(文・写真 野村麻里子)

卒業生がホームルームで得るものを描く 

優秀賞には松本深志高校など4校が選ばれた。前川さんの作品は、同校の1976年の卒業生が2004年から2年に一度のペースで開くホームルームを追ったもの。当時のクラス担任の話を教室で聞くことで高校時代を思い出し、「(また新しく)挑戦する勇気がもらえる」と話す卒業生たちの思いをていねいに紡いだ。
 実は放送委員会顧問で同窓生の林直哉先生が生徒だったクラスで行われてきた取り組み。3年間クラスも担任の教員も変わらないため、特に絆が深いという。先輩たちが取材してきた話題だが、なかなか番組化できていなかった。前川さんが取材に参加して「作品にしたい」と思い、制作を進めた。

完成まで何十回も作り直し 

編集などは前川さん一人で行った。「ホームルームで高校時代の自分を思い出し前向きになる卒業生の声を伝えたい」という思いに突き動かされ完成まで何十回も作り直し、「たくさん泣いた」と明かす。「取材が苦手で…。納得できる内容が得られるまで卒業生に何度も取材に行きました」。「これで良いのか?」「伝えたいことが伝わる作品になっているのか?」とこだわりぬいた。
 社会に出て、地位を得た卒業生にとって、教室でのホームルームは社会に出てから築いたものを脱ぎ捨てて、葛藤していた高校時代の自分に戻れる貴重な環境。前川さんは「(私は)まだ卒業していないので、(その心境に)たどり着くことができない。深くインタビューするのが難しかった」と話す。

テーマは身近なところで見つかる

林先生は、作品作りを通して成長する前川さんの姿を見守ってきた。「新しい視野が広がり、発見がある番組になった。構成する力がついた」と評価する。
 今は次回作の構想を練っているという前川さん。作品のテーマ選びのコツを聞くと、身近なところを観察することだと教えてくれた。「自分の学校では普通のことでも、意外と他県では『普通じゃない』ということがある。他県の人と交流する中でネタが見つかるかも」

7月の第64回NHK杯全国高校放送コンテスト(全国放送教育研究会連盟、NHK主催)では、制作班の別の生徒が主導した作品が「テレビドキュメント部門」で優勝。優秀な成績を残している。