高校生にとって母親はどんな存在だろう。感謝、親しみ、煩わしさ……。今年の母の日、5月12 日に合わせ、そんな母への思いを表現するインターネットサイトが公開された。制作したのは東京の女子高校生2人。渋谷で高校生100 人に母へのメッセージを書いてもらい、モザイクアートで表現した。 (西健太郎)
「母の日」と名付けられたサイト(http://mothersday0512.tumblr.com/)を制作したのは、川崎未結さんと三村文香さん(共に東京・三田高校2年)。アクセスすると、赤ちゃんの写真が目に飛び込んでくる。メッセージボードを持った高校生の写真を組み合わせたモザイクアートだ。
画用紙などに色とりどりのペンで書かれたメッセージの拡大写真も掲載されている。 「ほんとは感謝してます」 「LINEしろってうるさい。」 「いい加減自立させて」 「いつも飯作ってくれてありがとう!」 「たまには話そーね!」 ちょうど100人分。男子も女子もいる。日頃の感謝や、自身の行動をわびる言葉に交え、苦情、要望、おねだりなど内容はさまざまだ。
川崎さんと三村さんは学校生活を送る傍ら、「きっかけづくり」を理念に掲げる、学校外の高校生団体「Ps(ピース)」にも所属する。団体で街頭の清掃や募金などの活動をする中で「母の日」の企画を思いついた。
「同じ高校生に働き掛ける企画をしたい」「母の日にメッセージを集めよう」「モザイクアートにしてみたい」。2人で話し合い、アイデアを固めた。
2人は企画の狙いを「小学生のころは親が全て。中学生になると反抗期になるが、高校生は親との衝突を避けるようになる。だからこそ、高校生が母親との関係を考えるきっかけをつくりたかった」と説明する。一方で、高校生の思いをなかなか聞けない母親に、子どもたちの思いを届ける意図もあったという。
企画を実行したのは、4月下旬から5月初旬にかけての3日間。2人で渋谷に出かけ、連れ立って遊びにきている高校生を見つけると「メッセージを集めています」と笑顔で協力を求めた。「重い感じじゃなくて……」と言い添え、感謝の言葉を無理強いしないよう気を付けた。「きれいごとでなく、本音を書いてほしかった」(川崎さん)
初めは驚いた感じの高校生もいたが、大半が引き受けてくれた。ただ、すぐには書けない。悩んだ末にペンを動かし始める人が大半だったという。書き上げるとみんな笑顔になり、「頑張ってください」と2人を励ましてくれる高校生もいた。三村さんは「高校生に良くないイメージを持っている大人もいるけど、みんないろいろ考えているし、心がきれいでした」と振り返る。
メッセージを持った高校生を撮影させてもらい、パソコンソフトを使って画像を組み合わせた。赤ちゃんの写真にしたのは「母親が全てだったころ」を表現したかったから。
2人も自身のメッセージを載せた。「顔を見るのも嫌な時もあるけど 世界で一番尊敬しています」「いつもてきとうにあしらっちゃってるけど 小さくて一生懸命なお母さんが好きです」。脇に「掃除して!!」「お金ちょーだい」と添えた。
「私たち自身が母との関係がちゃんとできていない。だからこそ、共感して書いてもらえたと思う」と川崎さん。自分たちの母親には、この企画に取り組んだことを、まだ伝えていないという。