英語の発音を勉強していると、「a」を「ア」のように読んだり、「エ」のようだったり、いろいろな発音があって覚えるのが大変だなぁ、日本語なら平仮名の発音が変わることなんてないのに……と思わない? でも、日本語の発音でも、たくさん変化する音があるんだ。
それは「ん」。駅の看板で、新宿は「Shi“n”juku」、新橋は「Shi“m”bashi」のように、「n」と「m」の2つの書かれ方があることを、不思議に思った人もいるんじゃないかな? まず、いくつかの単語を発音してみよう。
「あん(案)」
「あんない(案内)」
「あんこ」
「あんまん」
舌、唇、喉の使い方に気をつけてみよう。それぞれどこか違うことに気付くはずだよ。「あん」は口の奥の方で音が出ている。「あんない」は舌が歯ぐきにくっついている。「あんこ」は英語の「n g 」の音で、喉の奥で響かせている。「あんまん」は口を閉じている。ほかにもあって、「ん」の発音は全部で6種類になる。
私たちは意識しないで使い分けられているけど、外国人は日本語の勉強をしないと違う音に感じてしまうんだ。だから、駅の看板でも「n」と「m」のように書き分けているんだね。
ずっと昔、平安時代は中国語の発音を参考にするなどして、「ん」を発音し分けていたけど、だんだん発音しやすいように、今の発音に変化していった。今の私たちは、幼いころから周りの大人の発音を聞いて言葉を覚えたから、自然に使い分けることができるんだ。 言葉は長い時間をかけて変化していくもの。今、高校生のみんなの間ではやっている新しい単語や発音も、将来は普通の言葉になっているかもしれないね。(岡達也)
●取材協力 笹原宏之先生(博士 (文学)早稲田大学社会科学総合学術院教授)漢字や現代の日本語を研究。著書に、『日本の漢字』(岩波新書)、『当て字・当て読み 漢字表現辞典』(三省堂)など。