「五輪で金メダルを取る」。それが野村琢真(東京・明大中野1年)=東京・文京一中出身=の夢だ。「一本で決着をつける美しい柔道」を理想とし、日々、己に厳しく練習に打ち込む逸材の素顔に迫る。 (文・写真 東憲吾)

毎朝5時半に目を覚まし、7時半から学校の周囲を4㌔走る。「気持ちが弱いので、家の周りでは続かない可能性があった。だから先生の目が届く学校で走っています」

週6日の練習では、限界を決めず自分を追い込む。目標とする選手は、五輪で3連覇した野村忠宏だ。「名字が同じで階級も近い。子どものころから意識している。一本にこだわる姿勢を見習いたい」と、技の鍛錬に余念がない。

高校入学直後の4月、全日本カデ柔道体重別選手権(15歳以上17歳未満の大会)66㌔級を制した。5月のポーランドカデ国際柔道大会でも優勝を果たし、世界の頂点に輝いた。それでもおごりはなく、柔道に対して、よりストイックになった。

「生活リズムを崩すと、練習に気が入らない」と、帰宅後の生活サイクルは毎日ほぼ同じ。遊びや息抜きも「柔道が楽しいから必要ないんです」。

全日本カデの合宿で栄養学に触れ、今は食事にも気を遣う。「疲れが取れにくくなる」と、甘い物や炭酸飲料は口にしない。バランス良くビタミンを取り、ささみを食べて効率よく筋肉を増やした。

顧問の石黒晃太郎先生(43)は「努力する才能が秀でている」と評する。努力の天才児は、鋭い目つきで最後に語った。「2020年に東京で五輪が開催されたら、その時僕は24歳。地元での金メダル、狙ってます」

のむら・たくま 1996 年6月25 日、香川県生まれ。3歳で柔道を始め、5歳の時に柔道の名門・講道館に入門する。中学3年次に全国中学柔道大会66㌔級を制覇。