3月の第40回全国高校柔道選手権(東京・日本武道館)で、男子66キロ級の西願寺哲平君(埼玉栄高校現3年)が2連覇を果たした。「1年生だった昨年は、がむしゃらにやるだけだった」というが、昨年夏以降、主将を任され「心身ともに成長できた」。一回り大きくなって再び日本一の座に上り詰めた。(文・小野哲史、写真・幡原裕治)
気を引き締めて臨んだ
ディフェンディングチャンピオンとして臨んだ同大会。周囲からは2連覇を期待する声が多かったが、自身はそのことを意識していなかった。むしろ「自分は、昨年の全国高校総体(インターハイ)でベスト4止まりでした。そんなに簡単にうまく行かない」と気を引き締めていた。
実際、連覇への道のりは平たんではなかった。決勝後に「厳しかった。でも、あそこで勝てたことで波に乗れた」と振り返ったように、延長で8分間にも及んだ初戦の2回戦を突破したことで勢いづいた。3回戦は袖釣り込み腰、準々決勝は一本背負いと、いずれも1分余りで鮮やかに一本勝ちを収め、着実に勝ち上がっていく。
主将務め人間的に成長
試合を重ねるごとに、大会のためにやってきた取り組みに手応えをつかんでいた。「立ち技は投げ技のキレを、寝技なら関節技や締め技を強化してきました。特に寝技は柔術の先生の所に行ったり、来ていただいたりして、だいぶレベルアップできました」。その言葉通り、松村士君(東京・足立学園現3年)との決勝では終始、攻撃的な姿勢を崩さず、最後はうまく寝技に持ち込んで腕ひしぎ十字固めで一本。「やってきたことを少しは出せた」と胸を張った。
この1年間を振り返り、主将になったことも大きかったと感じている。「自分のことをやるのはもちろんですが、周りを見て声を掛けたりもしなければいけない。最初はできるか不安もありましたが、みんなもサポートしてくれたおかげで、人間的にも成長でき、それが柔道につながったと思います」
夢は五輪出場
夢は五輪への出場。それをかなえるために、西願寺君は「この優勝は今日一日で終わり。高校最後の1年間は全日本ジュニアとインターハイで勝って、講道館杯につなげていきたい」と、次なる目標に気持ちを向けた。