大学のキャンパスで友人とピクニックをするリリーさん(左端)(本人提供)

米国の大学生はどのように学び、どんな学生生活を過ごしているのか。米国留学のサポートや日本各地で留学相談の機会を提供する公的機関「EducationUSA」の留学アドバイザーに、米国の大学の仕組みを聞いた。(中田宗孝)

1回の講義で2時間予習

──学期制は。

一般的に、9月から翌年の5月までの9カ月間を1学年としていて、「アカデミックイヤー」と呼んでいます。6~8月は夏休みです。アカデミックイヤーを2期(17~18週間で1期)に分けるのが「セメスター制」です。

一方、12カ月を4期(11~13週で1期)に分けるのが「クオーター制」。現在、セメスター制を採用する大学が多いようです。

──講義の特徴は。

積極的な参加型が多く、「ディスカッション」も重視されます。教員と学生が活発な討論を交わしたり、他の学生に自分の主張を伝えながら意見の違いを語り合ったり、受け身な学習とは異なります。

教員が初回の講義で、各回の予定、成績の評価基準や評価の内訳が具体的に書かれた「シラバス」を配ります。成績はABCDFの5段階評価で、評価基準は細かくて厳格です。出欠に関しては特に厳しく、3回欠席すればAの評価はまずもらえません。好成績を収めるには、必然的に予習など勉強量も増えていきます。1回の講義を受けるため専門書を100ページ読むなど、2時間以上予習をしないと付いていけないこともあります。

専攻決めずに進学可

──学部や専攻の決め方は。

日本では受験の際にどの学部に進むかを決めますが、米国では一般的に進学前に専攻を決めておく必要はありません(看護学、美大・音大など例外を除く)。大学生活の最初の2年間で一般教養を履修します。その中で、さまざまな分野の科目を受講しながら、自分がより追求したい専攻を3年次に決めるので、専攻をじっくりと考える時間が学生に与えられています。

──専攻のシステムの詳細は。

米国では専攻分野(メジャー)と副専攻分野(マイナー)を選択できるようになっています。例えば、専攻が歴史、副専攻が政治学というように、一般的に副専攻の科目は、自分が決めた専攻の分野・科目と関係の深いものを選ぶことが多いですが、関係ない分野でも選べます。

専攻と副専攻の科目を履修するだけでも大変ですが、専攻を2つ以上選ぶ「ダブル・メジャー(二重専攻)」も可能です。学位取得に時間がかかりますし、勉学に熱意のある証しです。

人気のある専攻で希望者が殺到する場合は、GPA(Grade Point Average)という成績評価の値で選考される場合があります。一方、途中で専攻を変えても最終的に単位を取得すれば問題ありません。日本に比べて柔軟なのも米国の大学教育の特徴です。

「卒業後に就活」が一般的

──就職活動はいつするのですか。

多くの学生が大学卒業後、就職活動に取り組みます。卒業まで勉強が忙しいのもありますが、仕事に対する日米の考え方の違いも影響しています。米国は新卒採用で一斉に入社する文化がありません。日本では新卒で優良企業に入社し、同じ会社に長く勤務しようと思う人が多いのではないかと思いますが、米国は、その時々の生活環境や自身の考えに合った仕事を選び、転職も盛んに行われます。転職自体をキャリアアップと捉える意識が強いのではないでしょうか。

――米国の大学に留学した日本の学生はどんなことに悩んでいますか。

留学前に英語の語彙(ごい)数をもっと増やしておけば良かったという声を聞きます。外国の友人と話したり、文章を書いたりする際、自分の語彙(ごい)力の未熟さを痛感する場面が多かったようです。

例えば、誰かを褒める時、どんな状況でも「It's Great!」ばかり使ってしまいがちですが、人を褒める英語は「Excellent!」や「Awesome!」など言い回しがたくさんあります。一つの表現だけ覚えて良しとせず、英英辞典などを使って類義語も合わせて覚えていくと良いでしょう。

――授業についていけない時はどうしたら良いのでしょう。

米国の大学は、留学生を含む学生のためのサポートサービスが充実しています。例えば、英語の文章・文法で悩んでいたら学内の「ライティングセンター」という場所で文章・文法を添削してくれます。

また、日常生活で相談事があれば学内の「留学生センター」に常駐する留学生担当アドバイザーの元を訪ね相談するとアドバイスがもらえます。日本含むアジアからの留学生は、困ったことがあっても自分の中で抱え込むことが多いといわれるので、積極的に「私、困っています!」と、自ら助けを求める姿勢も大切です。しかしその際も、問題を解決するのはあくまで本人(自分)であり、アドバイスはもらうけれど、主体的に行動するのは自分自身だということを忘れないでください。

【EducationUSA】米国務省・教育文化局が支援する国際ネットワークで、米国の留学に特化した最新情報を無料提供している。自分で留学手続きを行いたい人向けの情報をウェブサイト(https://americancenterjapan.com/)で公開。9月9日に米国大使館主催の「アメリカ留学EXPO 2017」を共催する(http://americaexpo.jp/)。

米国大学生のある一日

米国務省のインターンとして来日しているリリー・R・マックフィーターズさん(メリーランド州立タウソン大学卒業。現在ジョージタウン大学大学院2年)に、学生時代の一日を振り返ってもらいました。

 
義務教育の高校を卒業すると、周囲からは自立した大人として見られます。親元を離れて寮生活や一人暮らしをする学生が多いです。勉強は寮の部屋や休憩室、図書館、カフェや外など、さまざま所で行います。みんな「自分の個性を伸ばすためにどうすれば良いか」を考えて学んでいました。
 8:15
車で学校に通う。高校生のころから車を所有して運転できる学生が多い
 9:00
学内の「ライティングセンター」でアルバイト。外国語の論文執筆に悩む留学生をサポート
 11:00
国際関係の講義に出席。ほかの大学の学生と一緒に模擬国連の協議を行う
 12:15
ランチ。天気が良ければ友人たちと学内の芝生でピクニック
 13:00
サークル活動。日本語のクラスの友人と立ち上げた日本文化のサークルでおにぎりを作る
 15:00
学内のごみ拾いなどボランティア活動に従事
 20:30
市内で夕食を済ませて帰宅
 22:00
宿題・勉強
 23:00
就寝