今夏の全国高校総体(インターハイ)で剣道女子団体戦2連覇を成し遂げた守谷。部員は1日3~4時間の練習に集中して取り組んでいるが、特別変わったメニューがあるわけではない。〝強さのヒミツ〟は、むしろ練習以外の日常の過ごし方にあった。 (文・写真 小野哲史) 

塚本浩一監督(50)が日頃から部員に言い聞かせているのが、「心が成長しなければ、技術は成長しない」という考え方だ。練習を一生懸命やるのは当たり前。落ちているごみは率先して拾い、玄関で靴が乱れていたらきちんとそろえる。掃除は見えない部分まで手を抜かない。「そうやって視野を広く持つことが、相手の心や次の展開を読む剣道にも生きてくるんです」と、この秋から主将を務める吉村遥(2年)=京都・久御山中出身=は言う。

また、塚本監督は人から信頼されることも大切と説く。「心の持ちようが大事。例えば、あと一歩で団体戦のメンバーに入れそうな選手は、レギュラー選手の負けやけがを待っているようでは絶対メンバーにはなれません。自分の力で監督や仲間に信用されて、初めて試合に出ることができるのです」。吉村は「オンとオフのけじめをしっかりつけているので、学校や部活以外では先輩、後輩関係なく仲が良い」と、チームワークの良さを強調する。

部は監督を含め一人一人が強い信頼関係で結ばれている。部員が毎日の練習や学校での出来事、プライベートなことなどを自由に書いて提出する「剣道日記」は、塚本監督と部員との絆を深めるツールになっている。前主将の大亀杏(3年)=東京・小金井一中出身=は、「インターハイ後の日記で、先生から『ありがとう』と書いていただき、うるっときました」と話す。

 

 

 部の特徴的な取り組みを挙げるなら、毎年3月に3日間行う「武者修行」がある。全国の警察や実業団、大学などの剣道部に各部員が出稽古に行くのだ。塚本監督は言う。「最近は何から何までやってあげる先生や親が多い。出稽古では、どこに行くかを決めることから、そのチームへの依頼、交通手段や宿の手配まで全て1人でやらせます」。比佐愛(3年)=茨城・勝田二中出身=は、練習の厳しさが日本一といわれる水戸葵陵に出向いた時のことを、「自分の限界を超えるようなきつい練習でしたが、最後までやり切ったことで強くなれたと思うし、自信もつきました」と胸を張った。

インターハイでは多くの先生が自腹で新潟まで応援に駆けつけ、団体戦優勝を涙を流して喜んでくれたという。剣道部員の品行方正さと、授業を決しておろそかにしない日々の模範的な態度が、先生たちに「あの生徒を応援したい」と思わせたのだろう。守谷は〝磨かれた心〟で来夏、インターハイ3連覇という偉業に挑む。

 

 

【TEAM DATA】
創部/ 1983 年部員/ 14 人(3年生5人、2年生4人、1年生5人)※3年生は引退したが練習を続けている練習時間/平日16 時~ 19 時(月曜日以外は40 分間の朝練もあり)、土日4時間 休みは無し指導者/監督:塚本浩一(50)、副顧問:安藤絵里香(26)、出雲大輔(23)、外部コーチ:水田重則(62)主な実績/インターハイ優勝4回、準優勝1回。全国高校剣道選抜大会優勝1回、準優勝2回部訓/百錬剛(強靱で強い意志)

取材を終えて

道場に入ると、部員の元気なあいさつに迎えられた。練習前はみんなが楽しそうに談笑していたが、練習が始まった途端、張り詰めた空気が道場を包んでいく。生徒が話していた通り、めりはりがあった。写真撮影などをお願いする際も、きびきびと動いてくれることに好印象を持った。