第63回NHK杯全国高校放送コンテスト(Nコン)が7月28日に行われ、アナウンス部門で兵庫・小野高校の杉本菜瑠さん(3年)が全国4181人の頂点に輝き、日本一の高校生アナウンサーとなった。高校からアナウンスを始め、「妥協が嫌いな性格」という杉本さんの強さの秘密に迫った。(文・写真 白井邦彦)
「屈辱」をバネに成長
放送の世界へ飛び込むきっかけは、中学時代の授業で取り組んだ絵本の読み聞かせだった。「大勢の前で朗読し、聞いた人たちから反応が返ってくる。文章が人の心に伝わる楽しさを知った」と振り返る。高校で放送部に入部し、アナウンスを始めた。
高校1年で兵庫県総合文化祭の銅賞に輝くなど、才能は早くに開花し、同学年相手では県内に敵なしの状態になった。だが、高1の最後に県内であった中規模の大会でまさかの3位に。「うぬぼれていた。結果にこだわり、『聞き手に伝える』というアナウンスの基本も忘れていた。でも、この屈辱を経験できたのは大きかった」と話す。この経験で、見失っていたアナウンサーとして大切な姿勢を取り戻した。
自分から逃げない
Nコンの発表原稿は、同級生が地理オリンピックの国内大会で金メダルを受賞するまでの紆余(うよ)曲折と未来へ一歩踏み出す勇気の大切さを描こうとした。膨大な取材メモをまずルーズリーフ50枚にまとめ、さらに約300文字の1分半の原稿に仕上げる作業は4カ月近くに及んだ。何十回と書き直し、締め切り日の朝まで原稿に手を加えた。放送部顧問の山本美千代先生は「芯が通っていて、妥協が嫌いな性格」と評す。
こだわったのは、聞き手の身体にすっと染み込むような言葉選び。原稿には、発音が苦手な言葉がいくつもあったという。だが「苦手な言葉を外すこともできたが、聞き手に伝える言葉として最適なものを最優先に考えた」と逃げなかった。
Nコン決勝では、部の仲間や先生、審査員らから「楽しんで」と声を掛けられた。「絵本の読み聞かせをした時と同じような楽しさを決勝で感じた。この舞台を楽しめたことは、私の大きな財産です」