犯罪を計画段階から処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法が6月15日、参院本会議で成立した。自民、公明両党は委員会採決を省略できる「中間報告」と呼ばれる異例の手続きで一方的に参院法務委員会の審議を打ち切り、本会議採決を強行して可決した。
首相「テロを未然に防ぐ」
野党「適用対象があいまい」
Qどんな法律?
一般的に犯罪の実行までは①共謀②予備③未遂④既遂──の段階があるが、日本の刑法では未遂より前の「共謀」「予備」の処罰は極めて例外的だ。しかし共謀罪の新設で、犯罪によっては、未遂が処罰されないのに共謀段階で処罰されることになる。法律専門家からは「日本の刑法の体系を根底から覆す」という指摘もある。
改正法は、運用対象をテロ組織や暴力団などの「組織的犯罪集団」と規定。政府は「一般人」は対象にならないと強調している。
Qなぜ必要?
日本が2000年に署名した国際組織犯罪防止条約は「重大な犯罪の合意」などを犯罪化するよう義務付けている。安倍晋三首相はこれを根拠に「東京五輪・パラリンピックを控え、国際犯罪防止条約を締結してテロを未然に防ぐため、国際社会と連携しなければならない」としている。
Q懸念は?
野党は「適用対象の基準があいまいで恣意(しい)的に運用されかねない」と批判し、異例の採決についても「審議不足であり暴挙、憲政史上の汚点だ」と強く反発。また、日本ペンクラブや弁護士団体、新聞・書籍団体、映画監督のグループなども「思想の自由、表現の自由などを侵害する」などと相次いで抗議を表明した。
組織犯罪処罰法改正案をめぐっては、「人権擁護の最前線」に立つ国連特別報告者のケナタッチ氏が「深刻な欠陥のある法案をこれだけ拙速に押し通すことは絶対に正当化できない」と批判する書簡を日本政府に送っている。