2014年度、一部またはすべての入試でWebによる出願を取り入れた私立大学・短期大学は70校を超えた。Web出願とは、紙の願書を入手して記入・郵送するという今までの方法とは異なり、Web上で必要事項を入力・送信する出願方法だ。

2015年度の入試では広島大学(国立)でも導入予定で、すでに東洋大学、近畿大学、中京大学では紙での出願を廃止し、完全にWebでの出願に切り替えるなど、Web出願が急速に広まっている。Web上で出願が便利に行える反面、まだ、調査書等、必要書類を後日郵送するケースが一般的で課題点も残されている。しかし、今後ますます増えていく出願方法には違いない。

急速に広まりつつあるWeb出願を、受験生や彼らを指導する高校がどのように考え、対応しているのか東京都立晴海総合高等学校を訪ねた。

パソコン世代の高校生には受け入れやすいWeb出願

「生徒には特に指導はしていません。今の高校生にとってWeb出願は敷居の高いものではなく、メリットの多い便利な方法です。彼らは生まれた時からパソコンがある世代。スマホやパソコンでの買い物に慣れていますから、同じ感覚でWeb出願も自分で難なくやっているようです。保護者よりも理解していると思いますね」と話すのは東京都立晴海総合高等学校教諭の千葉吉裕先生だ。

検定料の支払い方法も選択できるようになり、夜でも締め切り寸前でも出願できるようになったことは、むしろ高校生が積極的に受け入れる要因となっているそうだ。

今回、Web出願を利用したSさんは、親の手を借りずに手続きをすべて自分で済ませた。「学校に行く前など買い物ついでに寄れるのでコンビニでの支払いが便利。私の受験校では、自分で書類を印刷する必要がありましたが、印刷前に画面上で記入ミスをチェックしてくれるので、その点もラクでした。デメリットはあまり感じません」とのこと。Web出願を抵抗なく受け入れているが、「同じ大学で併願する場合、調査書を併願する度に出す大学と、1通でよい大学があるので、そこは1通にしてほしいです」と、より高い利便性を求める意見も聞かせてくれた。

千葉先生は「調査書を入試センターが一括管理するなど国が動く必要がありますが、大学から積極的に国に働きかけてほしいところです」と話す。さらに「印刷代や人件費などのコストダウンを考えれば、今の検定料の割引額よりもっと下げてほしいですね」。

受験生や保護者の立場に立った要望とともに、こんな懸念も挙げる。「受験者数のトリックを生む点ではちょっと落とし穴」。Web出願によって学内併願が増え、受験者数が上昇することで人気大学という印象を与えるという。気軽に出願できる「ついで出願」での受験者数を踏まえた上で、受験校選びには冷静になりたい。