ジャーナリスト 藤田正美

質問

2020年の夏季五輪が東京で開催されることに決まりましたが、どのくらいの経済効果が予想されますか?(高校2年女子)

回答

関連支出は3~4兆円、観光客増の起爆剤に

2020年に東京で五輪が開かれることが決まりました。いまだ11年の東日本大震災の傷が癒えず、原発事故にいたってはまだ多くの問題を抱えたままであることから、五輪を歓迎しない雰囲気もあります。そうした課題を残しながらも、東京五輪が日本の明るい材料となることは間違いないでしょう。

分かりやすいのは「経済効果」です。道路、鉄道などのインフラ、スタジアム(国立競技場が建て替えられることになっています)やその他の関連施設の建設といった直接的な投資です。そして五輪というイベントそのものに関連する支出が含まれます。金額としては20年までの7年間で、ざっと3兆円から4兆円といわれています。

これが、日本の経済をある程度押し上げることは明らかです。ただ、その金額そのものは、そう大したお金ではありません。7年間で4兆円だとしても1年当たりで6000億円、日本の国内総生産(GDP)からすれば0.1%強ぐらいの数字です。それよりも大きいのは、東京五輪開催の前後に日本を訪れる外国人が増えることだと思われます。

日本は観光資源が多いのに、日本を訪れる外国人の数はそう多いわけではありません。世界観光機関の調べでは、12年に日本に来た観光客の数は836万人です。これは世界33位で、1位のフランス(8301万人)と比べると約10分の1でしかありません。現在、日本政府は、日本を訪れる外国人の数を年間2000万人にする目標を立てていますが、そうなっても、ようやくタイ(2235万人で15位)と並ぶ程度です。

なぜ観光が重要なのでしょうか。それは日本の人口が減っていくからです。人口が減るということは、需要が減るということです。そうなると製造業やサービス業の企業は、日本で拡大することが難しくなります。これが、日本企業が海外に進出する最大の理由と言ってもいいでしょう。

その意味で日本の経済が一定の水準を保つためには、海外から観光客を誘致することが重要になります。東京五輪が、その一つのきっかけとなればいいと考えている人は多いのではないでしょうか。

【ふじた・まさよし】
1948年生まれ。東京大学卒業後、「週刊東洋経済」記者・編集者を経て「ニューズウイーク日本版」創刊プロジェクトに参加。同誌編集長、編集主幹。現在はフリージャーナリストとして活躍中。