全国高校総体(インターハイ)バスケットボール男子の決勝が8月5日に広島サンプラザで行われ、福岡第一(福岡)が東山(京都)を76-69で破り、7年ぶり2度目の優勝を果たした。(文・小野哲史、写真・幡原裕治)
序盤は相手ペース、監督は「20点差まで大丈夫」
福岡第一は前半、岡田侑大(3年)やカロンジ・カボンゴ・パトリック(2年)ら、屈指のタレントを擁する東山に主導権を握られた。重冨周希(3年)が「自分はキャプテンとして、ガードとしてチームを引っ張らないといけない立場なのに、弱気というか、うまく攻撃をコントロールできませんでした」と振り返ったように、福岡第一の持ち味であるスピーディな攻撃が影を潜めた。徐々に点差を広げられ、29-42で前半を折り返すと、第3ピリオド開始早々にもパトリックに決められ、15点もの大差をつけられてしまった。
しかし、「焦りはなかった」と重冨と双子の兄弟でガードの友希(3年)は言う。「前半が終わって(井手口孝)先生からも『20点差までは大丈夫だぞ』と言われたので、後半は気持ちを切り替えて臨むだけでした」
ゾーンプレスへの変更が機能し始めた福岡第一は、重冨周の連続ドライブや、蔡錦鈺(3年)の200センチの長身を生かしたプレーで追撃を開始。東山のシュートが精度を欠くようになり、一気に点差を縮め、第3ピリオド残り3分には重冨兄弟の鮮やかな連携から52-50とついに逆転に成功した。
運動量で圧倒「練習のほうがきつかった」
第4ピリオドに入っても福岡第一の勢いは止まらない。「普段から朝、学校の周りをランニングして、放課後はコート内のダッシュを何本も繰り返しました。試合より練習の方が何倍もきつかった」と重冨友。前半以上ともいえる運動量で相手を圧倒したのは、血のにじむような地道な努力があったからだ。
井手口コーチが「メンバー交代もうまくいった」と語ったように、小野絢喜やバムアンゲイ・ジョナサン、松本礼太(いずれも2年)ら、途中から投入された選手たちも与えられた役割をしっかりとこなした。「2年生は以前はおどおどしていましたが、ようやく安心して任せられるようになりました」と井手口コーチ。チームが一つになって日本一への階段を上り詰めた。
悔しさ乗り越えたから優勝できた
「これまで先生に怒られたり、練習でうまくいかなくて悔しかったこともありましたが、それを乗り越えてきたからこそ、この日本一があると思います。井手口先生や(アシスタントコーチの)今井康輔先生、保護者の方々に感謝したいです」。そう語った重冨周は、チームメートにうながされ、ともに殊勲者となった重冨友と照れくさそうに肩を組んで、写真撮影のリクエストに応えていた。