身近なテーマを通じて発展途上国の今がわかる新シリーズ。今回はルワンダのファッションを紹介。経済成長著しい国なのに国内の衣料品産業が育たず輸入の古着が大量に出回っているというが、その背景とは・・・。

サッカー選手やアイドルのポスターの前でポーズをキメるのはアフリカ中部の内陸国ルワンダの高校生。このネクタイの締め方はベルギー・スタイルと呼ばれる古い時代のもの。かつてはベルギーの植民地だったルワンダでは今もこれがイケてるファッションだ。

ルワンダの高校は宿題が多くとても厳しいため生徒は簡単にアルバイトなどができる環境ではない。お小遣いも少ないため服にかけられるお金も限られている。そのため本格的におしゃれを始めるのは高校を卒業してから。高校では制服が決められており、日常的にそれを着て生活している。制服は、清潔なイメージのある青の単色が多く、ほかに黄色や緑色の制服もある。それらはルワンダの国旗に使われている3色である。

若者のファッションの中心は、市場で大量に安く売られている外国製の古着だ。シャツが日本円で約600円程度。古着をうまく組み合わせ、カラフルに着こなすのが主流だ。男性はチェックシャツにデニムといったアメカジのほか、HIPHOPスタイルをきめている人も多い。女性は合皮の革ジャンに、スキニーデニム、パンプスといったスタイルが主流。日ごろから民族衣装を着ている若者はほとんど見かけない。

髪型については、高校までは学校の決まりで男女ともに日本でいう坊主頭。高校卒業後、女性はエクステなどを使って編み込み始めたり、ストレートパーマをかけたりする。また最近では、おでこを出してオールバックやリーゼントにしている女性も多い。

これはルワンダで人気の歌手を真似たスタイル。ファッション専門誌はなく、テレビの出演者などを参考にするのが一般的だ。

ルワンダといえば、1994年に起きた3カ月間で80万~100万人の犠牲者が出た民族大虐殺が有名。その出来事から20年。悲惨な過去を乗り越え、ルワンダは今や「アフリカの奇跡」と呼ばれるまでの経済成長をとげ、首都キガリにはビルやデパートが次々に建設されている。ITやサービス産業などの発展は目覚ましく、人々の所得は増え、社会人だけでなく多くの高校生が携帯電話を持っているが、基本的な教育、農業、水・衛生、インフラ(道路、電力、水道など)はまだまだ未発達で特に主要都市以外の開発は進んでいないのが現状だ。

ルワンダで外国製の古着が多いのは、国内には製造業に従事する技術者も機器類も施設も十分でなく、不安定な電気供給もあって国産の衣料品がほとんど生産されていないためだ。国際協力機構(JICA)はルワンダの安定した成長の実現のためにボランティア派遣も含めた様々な開発支援を実施している。

鈴木掌さんはJICAの青年海外協力隊ボランティア(服飾)としてルワンダに派遣され、2年間、地域の職業訓練校などで洋裁の指導に努めた。協力隊の任期が終了し、一旦帰国した後、鈴木さんは国際協力NPO「リボーン・京都」のプロジェクト専門家として今年8月再びルワンダに渡った。高品質でデザイン性も優れた衣服が、ルワンダ人の手によって生産・販売されるよう、技術者育成に貢献するためだ。ルワンダの人々がみんな自国製のシャツを着て颯爽と街を歩く。その日が1日も早く訪れることを鈴木さんは願っている。 日本で売られている衣料品の多くは東南アジア製だが、ルワンダ製の衣服に身を包む日も、そう遠くない未来かもしれない。

 

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