強豪がひしめく中、最後に土俵に残ったのは三本木農(青森)。16年ぶりの優勝だ。

主将を務める岩間優弥(3年)=岩手・大槌中出身=は、ある思いを胸に土俵に立っていた。震災により大槌町の実家を失い、現在も仮設住宅で暮らす両親を元気づけたい。自分が頑張る姿を見てもらえれば、少しは役に立てるのでは――。その気持ちを心に留め、日々苦しい稽古 を積んだ。5月に右膝にけがを負ったが、気持ちを切らすことなくリハビリに励み、今大会に間に合わせた。「被災地で頑張っている両親や近所の人たちを見ていたら、やっぱり力が湧いてきます。震災は自分の力になっています」(岩間)

金沢工との決勝戦では気迫のこもった相撲で相手を寄り切り、先鋒としてチームを勢いに乗せた。最終的には3-2の接戦となったが、昨年の都道府県中学横綱である打越奎也(1 年)=青森・中里中出身=の活躍などもあり、16 年ぶり3度目となる団体優勝を手に入れた。当日は、岩間の母親の厚子さんが応援に駆け付けた。優勝を決め、岩間は「とにかく前に出ることを意識した。優勝は夢のようです」とはにかんだ。

山崎邦彦監督(42)は「チームワークと気持ち、最後は意地でつかんだ勝利です。やっと全国で勝てました」と振り返った。(文・写真 東憲吾)