桐光学園の主将、小川航基

 

全国高校サッカー選手権(12月30日〜1月11日、東京ほか)の神奈川県予選決勝が11月7日に行われ、桐光学園が横浜市立東を2-0で破り、2年ぶり9度目の出場権を獲得した。主将のFW小川航基(3年)が2ゴールの活躍。照準を全国制覇へと合わせた。
(文・写真 茂野聡士)

 前線から激しいプレッシャーをかけ続け、ボールを奪えば複数人が絡んだ攻撃を仕掛け続ける。桐光学園は、理想に掲げるスタイルで試合を支配した。そして大黒柱の小川は、サイドからのクロスに対して、体ごと投げ出したダイレクトシュート。そして、相手のマークを巧みに外してのヘディングシュートと大一番で2得点を決めた。

 優勝までの過程は順風満帆だったわけではない。昨年度の県予選は3回戦敗退。今季は全国高校総体(インターハイ)に出場したものの、初戦敗退に終わった。鈴木勝大監督は、この2大会について「詰めの甘さがまだまだありました」と語る。

 小さなミスが積み重なってしまえば、敗戦に直結することを痛感した選手たちは、チーム全体で危機感を共有した。

 例えば、敗戦した試合後のことを、小川はこう振り返る。

 「試合後に1〜2時間かけてミーティングをしたこともありました。『今日はこの部分が良くなかった』と意見を出し合った結果、部員全員で責任を持って試合に臨むようになりました」

 今大会は準々決勝、準決勝とも1-0での勝利。接戦が続いても、気持ちを切らさず戦えたのは、チーム内の意思統一があったからこそだった。

 県予選優勝はあくまで「スタートライン」(鈴木監督)だ。チーム全員の目標は、あくまでも日本一。選手権開幕までに、一層の総合力アップを目指す。

全国高校サッカー選手権神奈川県予選で優勝した桐光学園(11月7日、横浜市のニッパツ三ツ沢球技場)

TEAM DATA 
 1978年創部。部員50人(3年生18人、2年生15人、1年生17人)。96年度の高校選手権で準優勝、2012年度はベスト4。中村俊輔、藤本淳吾(横浜F・マリノス)ら、多くのOBがプロとして羽ばたいている。



「東京五輪世代」引っ張る
小川航基

 「自分は毎試合、点を決めなければいけないという意識でやっています。だから、決勝の2点で決して満足できるわけではありません」

 殊勲の主将・小川は、チームを全国に導いてもなお貪欲だった。1週間前の準決勝では無得点。「ふがいないプレーをしてしまった」と猛省しつつも、気持ちを切り替えて決勝に臨み、見事に結果を残した。

 今季、豊富なシュートバリエーションで得点を積み重ねてきた。また、U-18日本代表にも招集されて国際大会も経験した。「東京五輪世代」を引っ張る選手として期待を集める。

 決定力の源は「成長し続けようとする姿勢」にある。例えば、試合や練習以外の時間はJリーグのゴール集をチェックするなど、研究に余念がない。「点を取れる選手は常にゴール前にいながら、うまくマークを外してボールを受けています。自分も味方にパスのタイミングを要求する意識を常に持ち、得点を取ろうと考えています」

 卒業後はジュビロ磐田への入団が内定した。プロ、そして世界を相手にしても、チームを勝利に導く一撃を奪うために。全国から強豪が集まる選手権は、実力を測る試金石となる。