真剣なまなざしで筆を握る寺子屋の子どもたち。左から2人目が小松原さん

私は夏休みに「高校生カンボジアスタディツアー」(日本ユネスコ協会連盟主催)に参加し、10日間の日程でカンボジアを訪れた。首都プノンペンや世界遺産アンコールワットがあるシェムリアップ州で、平和学習や現地の子どもとの交流、遺跡修復の手伝いなどをさせていただいた。
(高校生記者・小松原英莉)

目覚ましい成長と深刻な格差

出発前はカンボジアに対して、「途上国」というイメージを抱いていたが、現地に行ってそのイメージは覆された。プノンペンには多くの日本企業が進出し、高層ビルの建設が進むなど、目覚ましい成長を遂げていた。
 しかし、都心部から少し離れると、未舗装で道が悪く、電気も通っていない家が多かった。バナナやポストカード、スカフなどを抱え、道路の片隅で物売りをする子どももいた。深刻な「格差」を感じた。

「寺子屋」で生徒と交流

シェムリアップ州の「寺子屋」と呼ばれる学びの場「CLC(Community Learning Center)」で子どもたちと交流する機会があった。カンボジアは東南アジアでも識字率が低く、5人に1人は文字の読み書きができない。小学校の就学率は90%を超えるものの、家が貧しく働かなければならないなどの理由で、多くの児童が退学してしまうという。寺子屋では、教育を受けられなかった子どもが、文字の読み書きや収入向上のための技術訓練などに取り組んでいた。
 10~16歳が対象の寺子屋では、子どもたちが大きな声を隣の教室まで響かせて一生懸命に勉強していた。私たちは、折り紙を教え、鶴や飛行機などを一緒に折った。生徒の一人に、「一番大切な人は誰ですか」と聞くと、「お母さん。数えきれないほど怒られたけど、やっぱり自分を産んでくれたから」と答えた。大切なことを教えてもらい、胸が熱くなった。
 小学校低学年の年齢の子どもが学ぶ寺子屋では書道を教えた。私たちが書いた「心」や「友」という字をじっと見つめ、真剣なまなざしで筆を握る、きらきら輝く子どもたちの笑顔が忘れられない。

協力できること 探したい

10日間のスタディツアーを終えて、カンボジアへのイメージは大きく変わった。「途上国」「貧困」などと先入観を持って決め付けてしまうと、対等な関わりは築けない。必要なのは「支援」ではなく、「協力」だと思った。私にできることはなんだろう。まだ明確な答えはでていない。
 ともにスタディツアーに参加した7人の高校生と学生団体をつくった。カンボジアで出会ったたくさんの人々への感謝を忘れずに、自分にできることを探していきたいと思う。

メモ 高校生カンボジアスタディツアー
日本ユネスコ協会連盟が実施し、8月13日から22日まで、応募者から選ばれた高校生8人が参加した。地元の高校生による遺跡案内もあった。「寺子屋」は同連盟が進める教育支援活動でできた。