田澤 実准教授

[法政大学 キャリアデザイン学部 田澤 実准教授]

「キャリア」というと、一般的に「職業、就職」という意味にとられがちだが、実はその定義は幅広い。このキャリアという言葉を、“人の生涯、経歴”という意味でとらえ、研究対象としているのがキャリアデザイン学部だ。設立は2003年。「自らの生き方や学び方、働き方を主体的に設計(デザイン)できること」「他者のキャリア形成を支援できる専門性をもつこと」。同学部ではこの2つこそがこれからの時代を生きるための「核(コア)」であると位置づけている。この学部コンセプトは国内初のもので、現在でもオンリーワンに近い存在である。

同学部では、生涯のキャリアを「発達・教育」「ビジネス」「ライフ」の3領域に分類、それらを横断的に学んだうえで、学生各々が専門性を深めて学んでいくことができるカリキュラムになっている。

その理由について、田澤実准教授はこう語る。

「人は生涯の中で『子ども』『市民』『職業人』『家庭人』など、さまざまな役割を持ち、その役割は成長するにつれて連鎖していくものだからです。そして、役割が連鎖するときにどのような問題が起こるか、どんな解決法があるかを学んでいきます」

子どもの発達や教育、心理を学ぶ教育学部的な授業もあれば、対人援助要素の強いビジネスを学ぶ経営学部的な授業もある。各教授の専攻分野も職業能力開発や、臨床教育学、経営学、博物館学、美学・美術史など多彩だ。学外でのインターンシップやフィールドワークなど、体験型の科目も多く、並行して教員免許や博物館学芸員などの資格取得も可能。外国語のコミュニケーションスキルのアップを図ることもできる。

高校生の進路選択の
心理も研究テーマに!?

田澤准教授は、教育心理学、生涯発達心理学が専攻。

「授業で教えているのは教育相談と教育心理学。とくに生徒指導や教育相談における心理学的なアプローチに重点を置いています。民間企業でも『教える』という場面は多いはず。うちは教育学部ではないので、授業で扱った枠組みを、学校以外で使うことも想定しています」と話す田澤准教授。一方、ゼミでは「移行期の若者の心理」が研究テーマだ。

「人は、進学や就職など、ある段階から段階へ移行するときに心理の変化が現れやすいのです。就職にスポットをあてる学生もいれば、推薦入試や一般入試など、入試経路の違いによってその後の学びに違いがあるかを研究する学生など、テーマ設定は自由です」と話す。

学部生は、学年によって関心を持つ分野が変わっていくことが多い。キャリアデザインについて学ぶうちに志望が変わっていく学生もいる。そうした変化に対応できるよう幅広い選択肢を用意しているのが同学部の特徴のひとつだ。就職も民間企業が8割から9割、残りが公務員・教員など。サービスや金融・保険に関連する業種など、コミュニケーションが必要とされる仕事に就く卒業生が多いという。

「自分の希望や能力と社会状況を合わせて考え、キャリアデザインしていく視点があれば、将来になって『こんなつもりじゃなかった』という後悔を少し減らすことができます。また、一度キャリアを決めたら終わりではなく、リデザイン、つまり計画を修正する力も必要。社会に広く関心を持ち、自ら情報収集し、意思決定をしていくことを実践しながら、学生たちには、学び続ける力を身体化していってほしいと願っています」

 先輩に聞く
キャリアデザイン学部4年 宮崎武瑠さん
(東京・かえつ有明高等学校出身)
 印象に残っている授業は、2年次の「キャリアサポート実習」です。高校生に「キャリア教育プログラム」(少人数のグループで進路等について考えを述べたり、聞いたりして自己を見つめ直す企画)を実施するというもので、私はファシリテーター(中立な立場で意見を聞き、取りまとめる役)を務めました。心がけたのは、大学生という上からの立場ではなく、高校生と対等な目線を保つこと。話を聴く力やファシリテーターとしての能力が身につきました。このときの経験は、3年の秋から始めた世田谷区の野毛青少年交流センターのボランティアでも役立っています。卒業後は子どもたちが学校の外でも学んだり経験したりできる場を支援する仕事に就きたいと考えています。

 

 

 

 

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