はり(鍼)やきゅう(灸)によって、肩こりや腰痛、頭痛や胃痛などの体調不良を改善する東洋医学“鍼灸”。近年、西洋医学をベースとする現代医療を補う治療法として注目を集めています。今回は、“鍼灸”を行う「はり師」「きゅう師」になる方法について解説します。
Q 鍼灸って、どんなもの?
A 2000年以上前に中国で発祥した伝統医学。薬や手術に頼らず、その人自身の自然治癒力を高めることを目的とする医療行為です。はり(鍼)は、髪の毛くらいの細い金属製のはりで、きゅう(灸)は、ヨモギの葉から作られたモグサを燃やした熱の力で、体のツボ(経穴)に刺激を与えます。
肩こりや腰痛、関節・筋肉痛の緩和や治療のほか、頭痛や胃痛、ストレスや食欲不振などの慢性的な体調不良にも効果があります。患部を除去することを目的とする西洋医学に対し、鍼灸をはじめとした東洋医学では体全体のバランスを整えることで不調を改善していきます。
Q はり師・きゅう師になるとどんな仕事ができるの?
A はり・きゅう専門の治療院や病院の整形外科・リハビリ部門・東洋医学部門などに勤務するほか、スポーツクラブや老人福祉施設などで働くことも可能です。鍼灸には、肌の調子を整えたり、顔や足のむくみを解消したりする効果もあるとされているため、最近ではレディースクリニックなどの美容分野で活躍する人もいます。また、スポーツトレーナーとしてアスリートの心身をケアするなど、近年は「影の立役者」として活躍する姿も。コンディショニングやケガ予防などの局面で、東洋医学的な概念をもとに「自然治癒力を高める」「未病を治す」鍼灸が注目されているのです。
はり師・きゅう師は、数少ない独立開業権が認められた国家資格です。「人々の心身のバランスを整えるために自分の技術を生かしたい」と考えている人にとっては、とてもやりがいのある職業だといえるでしょう。
Q はり師・きゅう師になるにはどうすればいいの?
A はり師・きゅう師になるには、高校卒業後に鍼灸の専門学校や大学の鍼灸学科などで3年以上勉強したのち、国家試験に合格する必要があります。専門学校は3年間、大学は4年間かけて学ぶのが一般的で、東洋医学や、体の仕組みなどを学ぶとともに、実習を通じて患者にあわせた施術をするための能力も身につけていきます。必要な知識と技能はどちらでも習得できますが、3年間の専門学校に比べると、4年間かけて学ぶ大学の方が授業や実習の時間数が充実しているようです。特に、大学では専門科目のほかにも、医療やスポーツに関する知識や幅広い教養を学ぶカリキュラムが充実。施設や設備、教授・講師陣の顔ぶれといった点において、医療人としての技術と心構えを身につけるために理想的な環境といえます。
興味をもった人は、オープンキャンパスに足を運んでみるとよいでしょう。施設見学や実習体験に参加したり、先輩に直接質問したりすることで、大学で学べることについての理解が深まるはずです。