7月28日から北信越5県を舞台に開催された全国高校総体(インターハイ)。新潟・東北電力ビッグスワンスタジアムで行われた陸上競技では、注目を集めた実力伯仲の男子100㍍で大瀬戸一馬(福岡・小倉東3年)=福岡・新津中出身=が10秒47で制し、高校記録保持者の貫禄を示した。女子100㍍は、九州勢が1~3位を独占した。 (小野哲史)

昨年は国体少年Aで優勝し、今年4月には18年ぶりとなる高校新記録(10秒23)を樹立。インターハイは、大瀬戸が高校生として唯一、手にできていないタイトルだった。しかし、前日の4×100㍍リレーは予選で敗退するなど、コンディションは万全ではなかった。決勝を前に大瀬戸は「今までにないほど緊張していた」という。

号砲とともに実力者9人が横一線でスタート。序盤で大瀬戸が抜け出し、後続との差を少しずつ広げていったが、終盤から橋元晃志(鹿児島・川薩清修館3年)=鹿児島・野田中出身=が猛追する。わずかな差で先着したのは大瀬戸。10秒47の優勝タイムに「記録を出せなかったのは残念」と言いながらも、「今年の目標だったインターハイ優勝ができて良かった」と悲願達成に安堵の表情をのぞかせた。

一方、大瀬戸とは0秒03差で2位に食い込んだ橋元も「自分のレースができました。目指していた短距離2冠はできませんでしたが、意味のある2位だった」と満足げ。2日後の200㍍初制覇につなげた。

一時期はロンドン五輪のリレーメンバー入りを目指す選択肢もあった大瀬戸。それでも「強い選手は皆、インターハイでチャンピオンになるという過程を踏んでいる。自分の出した答えは間違っていなかった」と胸を張る。「秋以降にB標準記録を突破して、次のオリンピックには行かないといけないと思っています」。名実ともに高校最速の称号を得た若武者は、早くもその視線を4年後に向けていた。

おおせと・かずま 1994年8月5日、福岡県生まれ。178㌢、65㌔。2011年世界ユース選手権100㍍で銀メダル。今年4月の織田記念100㍍では従来の記録を0秒01上回る10秒23の高校新記録を18年ぶりに樹立した。