国際社会に衝撃を与えた非道なテロや、南シナ海をめぐる緊張など、今年も世界を揺るがすニュースが相次いだ。高校生にも知っておいてほしい海外の10大ニュースを選び、特に重要な出来事を解説する。(ジャーナリスト・藤田正美)
「IS」が相次ぐテロ
欧米で厳戒態勢続く
年の瀬が迫る11月に起きたパリの同時多発テロ事件で129人が犠牲になった。イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出し、フランスと、実行犯が逃走したとされるベルギーの捜査当局は大規模な捜査に乗り出した。
この事件の前、エジプトの保養地シャルムエルシェイクからロシアのサンクトペテルブルクに向け飛び立ったロシアの旅客機が爆弾によって墜落した。これもISが爆弾を仕掛けたとする声明を公表している。
ISは1月7日にもフランスの風刺週刊紙シャルリエブド(本社パリ)を襲撃し、この時は12人が犠牲になった。ISはさらに米国のニューヨークに自爆テロを仕掛けることを示唆するビデオを流し、米国は厳戒態勢を取っている。
シリアから欧州への難民
受け入れ拒否の動きも
ヨーロッパでテロを起こしているのは、移民あるいは移民2世として暮らすイスラム教徒の過激派が中心だ。さらにパリの自爆犯の1人が、ギリシャで難民申請を行っていたことも明らかになった。
内戦が続き、ISの拠点が広がるシリアからヨーロッパに数百万人規模で難民が流入する。欧州連合(EU)は分担して受け入れる計画だったが、パリ同時多発テロを受け、各国で受け入れ拒否の声が高まった。各国の政府は、テロ防止と人道支援のはざまで難しい決断を迫られている。
中国が軍事基地建設
緊張する南シナ海
南シナ海の島をめぐって、広く領有権を主張する中国と、周辺のフィリピンやベトナムなどが長く対立している。その中国が南沙諸島の岩礁を埋め立てて、軍事基地を建設していることが問題になっている。
この海域の「自由航行」を主張する米国は10月、中国が主張する「領海」内に駆逐艦を派遣し、航行させた。中国は南シナ海での対立に米国が口を挟むことに強く反発している。領有権の紛争は当事国同士で解決すべきだというのが中国の立場だ。
しかし南シナ海は海上輸送路として多くの商船が利用しているだけに、米国もそう簡単に引き下がることはできない。いったん撤退したフィリピンの米軍基地を再開することも検討されている。米国と中国の対立はそう簡単に解けそうにない。集団的自衛権の行使を認めた日本が、どのような役割を果たすのかが注目される。
変調を来す世界経済
中国の成長にブレーキ
2008年9月の「リーマン・ショック」以来、世界各国は財政支出と金融緩和で何とか危機を乗り切ってきた。しかし、世界経済をけん引してきた新興国の経済にブレーキがかかっている。
最も顕著なのは中国だ。中国政府は今年の成長率目標を7%と低めに抑えてきたが、現時点ではそれも達成が難しいかもしれない。不動産バブルを抑制しながら、一方で景気を刺激してデフレ圧力と戦うという難しいかじ取りを迫られている。
新興国の経済を揺るがしている要因の一つは、景気回復が続く米国にある。先進国の中で唯一、「量的緩和」(中央銀行が市場に出回るお金を増やし、経済を活性化しようとする)から脱却した米国が、いつ利上げをするかが注目されてきた。もし利上げということになると、ドルが米国に還流することになり、その結果、新興国が外貨不足に陥り、景気にさらにブレーキがかかるからだ。