工業化が進めば汚染が問題に

発展途上にある国では、工業化が進むと同時に、大気や水の汚染が進んで、社会問題になることが多い。

 日本でもそうだった。水俣病、四日市ぜんそく、東京の光化学スモッグをはじめとして、さまざまな汚染が問題になった。工業化によって汚染が進行しているのに、規制当局の対応は後手に回る。

 近年、日本では大気汚染や水汚染が問題になることは減ったが、急速に工業化が進む中国では汚染が進行している。特に話題になるのは、PM2.5だ。これから冬場に向かうと、家庭で暖房用の石炭が燃やされることで、汚染がひどくなる。そのほかにも、工場や自動車なども汚染源だ。昨年秋、アジア太平洋経済協力会議(APEC)が北京で開かれた時には、工場の操業停止が命じられ、北京の空は澄み渡った。

 

ニューデリー「世界一の汚染」

中国の後を追って工業化が進むインドでも、大気の質は急速に悪化している。世界保健機関(WHO)が明らかにしたところでは、世界で最も大気汚染がひどい都市ワースト20のうち、インドは1位のニューデリーを筆頭に13都市が名を連ねた。

 その元凶に挙げられているのがトラックなどのディーゼル車だ。ガソリンと比べて、燃料の軽油が安いために、ディーゼル車が急速に普及し、その結果、大気に含まれる粒子状物質が世界最悪になったとされている。

「汚い燃料」減らせるか

さらにインドのエネルギー事情も、こうした状況に拍車をかけている。インドでは火力発電の燃料として石炭を使う割合が高い。石炭は化石燃料の中でも「汚い燃料」とされ、日本などでも化石燃料について、石炭から石油、さらに天然ガスへと燃料を転換してきた経緯がある。

 大気汚染は深刻な健康被害をもたらす。報道によれば、インドの大都市では、子どもたちの間で、ぜんそくなどの呼吸器不全が急増しているという。こうした環境悪化を放置すれば、インド経済にとってマイナスだ。外国資本はインドへの投資をためらうようになるかもしれない。中国の次に世界経済の成長センターになることが期待されているインドだが、果たしてこの問題をどれだけ緩和できるか、世界は注目している。


 英語に挑戦 

New Delhi to levy green tax on trucks

Oct 9th 2015

A green tax is to be imposed on commercial trucks entering New Delhi in a measure environmental activists say could reduce air pollution in the smog-ridden city.

In a first of its kind in India, trucks entering the capital will have to pay an entry charge of Rs700 or R1300 ($20), depending on their size.

Trucks are held responsible for an estimated 30 per cent of vehicular pollution in New Delhi, and the environmentalists believe the tax will reduce their number.

“We’ve just had a major victory,” said Sunita Narain, a famous environmental activist the order on Friday to impose the charge.

(from Financial Times)


インド、トラックに環境税を課す

 インドの首都ニューデリーに入ってくるトラックについて、環境税が課されることになった。環境活動家は、これによってスモッグに悩まされている都市の空気汚染度が下がる、としている。

 こうした税はインドでは初めてのことだが、首都に入るトラックは大きさによって700ルピーから1300ルピー(約20ドル)を払わねばならなくなる。

 トラックは、ニューデリーの自動車による汚染の30%を占めていると推定されているが、この税によってその割合は下がるはずだ、と環境活動家は考えている。

 「われわれはたったいま、大きな勝利を収めたところだ」。著名な環境活動家であるスニタ・ナライン氏は、金曜日(10月9日)に最高裁判所が課徴金を命じる判決を下したのを受けて、こう語った。

(フィナンシャルタイムズ電子版2015年10月9日付より引用)