みんなから頼られる男が、ユニホーム姿で帰ってきた。兵庫・神戸学院大付軟式野球部は昨年の全国軟式野球選手権大会(毎年8月下旬、兵庫・明石トーカロ球場が主会場)に初出場し、ベスト4。当時マネジャーで、球場外での対応に奮闘した黒田拓哉(3年)=兵庫・御影中出身=が、一層奮起して選手再登録をつかみ取り、5番・一塁手で大舞台に挑戦する。

黒田は入学した一昨年6月、走塁で右膝半月板を損傷し、手術。その後はマネジャーとしてチームを支えた。昨夏ついに全国大会へ進出し、黒田は「対戦相手への礼儀、応援の人たちへの礼儀を尽くすこと」を肝に銘じて、マネジャーとして活躍した。同時に、強さを増していくチームに心を動かされる。準々決勝では奈良・天理に延長15回裏2-1でサヨナラ勝ち。同年春の練習試合で2桁得点を奪われた天理に、勝った。

チームに力が付き、黒田には「現場復帰」の願望が湧き上がった。筋力トレーニングなどに努め、今年春休みに復帰が実現した。山田昌一部長(42)と龍王賢一監督(31)も、黒田の気持ちの強さを受け入れた。

167㌢、76㌔のパワー型。しかし黒田は「バントをはじめミスをしないこと」とテーマを挙げる。昨年は三塁手だった安本大輝(3年)=兵庫・有野北中出身=がエースで主将となった。旧チーム時とは違う形で黒田の援護が頼りになる。安本は黒田の明るい顔を見て「全国大会にはまた出たいです」と、誓うように言った。(文・写真 宇佐見英治)