中高生がスマートフォン向けアプリの開発を行い、企画力や技術力を競う「アプリ甲子園2025」(丸井グループ、ライフイズテック主催)の決勝大会が11月に開催された。12組の中高生が、自ら開発したアプリの魅力をプレゼンした。「一般開発部門」と「AI開発部門」の入賞者を紹介する。(文・橋口結歌=大学生ライター、写真・アプリ甲子園運営事務局提供)
【AI開発部門・入賞作品】
AIをコア機能としたアプリやサービス開発を行い、企画力や技術力を競う部門。
数学をAIが解説
【優勝】「Mathmosis」南大地さん(長野・長野工業高等専門学校2年)
数学学習を助けるアプリ。事前に授業ノートをAIに読み込ませ、教材の問題を撮影し自分で解いた後、AIに解説を聞く、タブレット向けのアプリ。解説だけではなく、間違っている部分を指摘。「自分で考える能力」を保ちながら、数学問題を学習できる。
南さんにとって、数学は苦手な部分がある教科。「一人で数学を勉強していると、一人では気づけない間違いや理解できない時があります。既存のAIチャットアプリだと数学に適していないと感じ、開発を決めた」という。
AIのサポートで作業が楽に
【準優勝】「InfoNode」西島賢太朗さん(滋賀・立命館守山高校1年)、冨山翔太さん(大阪・清水谷高校2年)
「作っていたスライドの参考資料がどこに保存されたかわからない」などの不便を解消するアプリ。さまざまなアプリの作業内容がバラバラに保存され、情報が分断されて、人もAIも使いにくくなっている課題に目を向けた。
ノートやスライド、AIとの会話などをすべて同じ形式の「ノード(点)」として保存し、意味の近さで情報をつなぐ、新たな構造を採用。「グラフ表示」により、フォルダや時系列ではなく、「何についての情報か」で整理できる仕組みだ。
独自に設計したAIを搭載し、保存された情報の中から関連性の高い内容を素早く検索できるので、メールやスライド、ウェブ検索などさまざまな作業をグラフの中で一貫して行える。
教材を自動で作成
【江崎グリコ賞】「Neureka!」大平直輝さん(広島・広島学院中学校3年)
教科書やノートの写真をアップすると、教材を自動生成してくれるアプリ。ノートなどの写真をアップロードするだけで、ポッドキャストやフラッシュカードといった教材を作成できる。チャットやAI対話機能もあり、さらに学びの理解を効率化できる。
AIが和訳問題を出題
「紐解くん」大竹優輝さん(兵庫・神戸大学附属中等教育学校5年=高校2年相当)
手持ちの教科書や参考書を写真に撮るだけで、AIが専用の和訳問題を出題し、添削解説してくれる、新しい形の対話型英語学習アプリ。履歴保存や、先生も閲覧できる機能もあるため、自分がつまずきやすい部分を把握できる。
【一般開発部門】
自由なテーマでアプリ開発を行い、企画力や技術力を競う。
初心者でも紙の模型が作れる
【優勝】「Paper CAD」宮崎航大さん(東京・芝浦工業大学附属高校2年)
紙の模型建物制作を直感的に自動化し効率化する、建物模型設計向けWeb CADアプリケーションだ。3Dで設計した建物を、自動で2D展開図に変換できる。経験者でも初心者でも、ノウハウに頼らずに楽に模型を作れる。
鉄道模型ジオラマを4年制作してきた。「ジオラマづくりの中でも建物の模型が好き。でも設計がつらい」と感じた経験が開発のきっかけだ。模型作りでは、建物を見に行って寸法を測り、展開図にする必要がある。難しい展開図づくりの作業をサポートしてくれるアプリに仕上げた。
審査員からは「好きなことに対して、情熱を持って課題解決しているところに感心した」と評価された。
保護動物と飼い主をマッチングさせる
【準優勝】「わんにゃんマッチ」吉田香音さん(東京・共立女子高校2年)
犬や猫の保育放棄や保護施設での殺処分問題を解決するため、保護された犬や猫と新しい飼い主をマッチングするアプリ。相性を診断するAI診断や、実際の大きさを視覚的に確認できるARなどの先進技術で最適な家族探しができる。
きっかけは、SNSで殺処分の実態を知ったこと。「(住んでいる自治体の)殺処分数を調べるととても多いのに、浄土するサービスが分かりづらい。このままではゼロに近づけないと思った」という。審査員からは「すばらしい試み」と評価された。
世界を「新しい視点」で見られる
【準優勝】「monoful」室山結子さん(東京・早稲田実業学校高等部2年)
何気ない日常を写真に撮り、「色」に着目することで新しい視点で日々の景色を見つけられるアプリ。通知で「色を指定」され、写真を撮影。写真は、「1色のみ」が残り、あとはモノクロとなり、カレンダーに保存される。「いつもと違うもの」に目を向けるきっかけとなる。毎日の記録や、いつ写真を撮ったのかを把握できる。
「一度きりの人生。毎日同じ世界ばかり見て、当たり前として流してしまうのはもったいない!」という思いで開発を進めた。
スマホでポケベルが楽しめる
【マイナビ賞】「Bellmy」菊地桃々(東京・東京女学館高校3年)
スマホでポケベル体験ができる「平成レトロ」アプリ。親世代は「懐かしさ」を、若者世代は「新鮮さ」を味わえる。あえて、数字でのメッセージや既読機能をつけないことで、「伝わる」楽しさや醍醐味(だいごみ)を実感できる。
高齢者を地域で見守る
「みまもりコンパス」水野太陽さん(奈良女子大学附属中等教育学校3年=中学3年相当)
QRコードを使って、行方不明になった認知症高齢者の早期発見を地域全体で支える、見守りアプリ。基本情報を登録後、見守りタグを発行し認知症高齢者に身に着けてもらう。Webで完結するため、アプリのインストールは不要で簡単に活用できるのがポイント。
気軽に感謝を伝えられる
「good!」高橋海斗さん(N中等部3年)
気軽に褒めや感謝の気持ちを、絵文字と気軽な一言で伝えられるアプリ。恥ずかしくて言えない「いいね!」を直接相手に届けられる。共有用のQRコードは、3Dのように動くため、デザインも楽しめる。
英文の構造を視覚的に学べる
「Sentence Builder」筈谷将大さん(和歌山・智辯和歌山高校2年)
英単語ブロックで英文を組み立てることで、英文の構造を視覚的に学べるアプリ。「英文法を知っていても、実際には使えない人が多い」という課題から制作した。英単語のブロックを間違った位置や、間違った活用形で置こうとすると弾かれ、正しい英文法しか作れないようになっている。選択するワードを変えられるため、さまざまな場面での英語を楽しく習得できる。
寮生活をDX化
「DOME」中本慧思さん、市川和さん(ともに徳島・神山まるごと高等専門学校3年)
寮のデジタル化を促進するアプリ。寮の点呼から、外出外泊届、郵便室の荷物通知、洗濯機通知などをスマホ一つでできる。部屋の空き状況を見られたり一言コメントを表示できたり、寮生活での孤独や騒音問題を解決する機能が入っているのもポイント。
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アプリ甲子園
2011年から始まった。中高生を対象にしたアプリ・ウェブサービス開発コンテスト。世代を担う若手クリエーターの発掘と健全な育成支援が目的。AI開発部門、一般開発部門のほか、協賛企業からの課題解決をするアイデアを企画書形式にまとめ競うアイデア部門がある。AI開発、一般開発部門は、一次選考、二次選考を経て決勝大会に進むアプリが選ばれる。


















