加納隆先生

[埼玉医科大学 保健医療学部 医用生体工学科 加納隆教授]

工学の技術を医療に。
いのちのエンジニア

医学の進歩は医療機器の進歩といっても言い過ぎではないだろう。医療機器、なかでも人工呼吸器や人工心肺装置、血液透析機器といった「生命維持装置」の進歩に伴い、以前なら手の施しようのなかった患者の多くがほぼ普通の生活を送れるようになった。

 しかし人の命を支える医療機器であっても操作ミスや機械自体のトラブルは必ず起きる。そういったとき機器の操作や保守管理を行うのが“いのちのエンジニア”ともいわれる「臨床工学技士」の仕事だ。

 「患者さんと直接接することが比較的少ないため一般の人にはあまり知られていない職種ですが、医療機器の原理や構造、メンテナンスについて熟知した医療現場の“縁の下の力持ち”的存在で、チーム医療のなかで重要な役割を担っています。ちなみに、2014年度本学科卒業生の就職率は100%です」と臨床工学技士として臨床経験をもつ加納隆先生は話す。
 

本学科は臨床工学技士の養成校。学生全員が国家試験受験資格を得るための科目を履修し、卒業見込みの段階で国家試験を受験する。

 「学びの目標は工学の技術を医療に適用できるようになること。カリキュラムの半分は医療を、もう半分は医療機器の理解に必要な工学を学びます」と加納先生。医療従事者と医療機器メーカー、両者とコミュニケーションができる接着剤的な存在になることを目指すという。

 とはいえ同学科では、高校で物理を履修しなかった学生の入学が約半数を占める。「いったん高校物理に戻って授業をするなどの手当を行うため、意欲さえあれば入学をためらう必要はありません」と加納先生。医療への情熱と工学への興味・関心、その両方を伸ばすことができ、やりがいのある職業に直結するのがこの学科の魅力なのだ。

医療機器の安全管理をテーマに
研究に取り組む

工学部出身の加納先生。研究室では医療機器の安全管理をテーマにした研究に取り組んでいる。「例えばペースメーカーに影響するといわれる携帯電話の電波。そのリスクの度合いや安全対策などを研究しています。企業との共同研究開発なども積極的に行っており、過去の研究成果のなかには特許権を取得したものもあります」

 卒業後はほぼ全員が医療機関に就職するが、臨床工学技士として臨床経験を積み、タイミングを見計らって現場あるいは大学院で医療機器の研究開発に関わりたいと考える学生もいる。「研究室ではそのためのベースとなる力の養成を心がけています」

 なお医用生体工学科の学生は3年次より研究室に配属。研究に少しずつ触れながら、1学年4人の少人数体制を生かした受験対策なども行っている。

日本有数の高度医療を提供する
付属病院で臨床実習

同学科で臨床工学技士を目指すメリットのひとつは、日本有数の高度医療を提供する3つの付属病院があること。それらの病院で行う臨床実習では、ありとあらゆる最先端の医療機器を実際に見ながら、医療スタッフの指導が受けられる。また卒業生は付属病院に優先的に就職できる。

 加納先生は高校生に「まずはオープンキャンパスに参加してみてください。その他にも、臨床工学技士会が主催する中高生を対象としたイベントなどもありますので、積極的に参加し、臨床工学技士の魅力とその仕事についてしっかりと理解してください」とメッセージを送る。「人の命を支え、医療スタッフから頼りにされる、誇りを持って働ける仕事であることがわかるはずです」
 

 先輩に聞く
佐々木尚也さん・4年
(岩手県立盛岡北高等学校出身)
 医療に従事している兄の影響で医療に興味を持つように。オープンキャンパスで学科の先生方の話を聞き、臨床工学技士を目指そうと決意しました。研究室では心機能が著しく低下した患者さんのための補助循環装置、IABP(大動脈内バルーンパンピング)に微小リーク(体内に微小のヘリウムガスが漏れること)が発生した際の検出アラームを研究開発しています。もともと工学も好きだったので、本格的な研究開発ができること、企業との共同研究に参加できることなどがとても嬉しく、毎日が充実しています。卒業後はいったん臨床工学技士として医療機関に就職し、折りをみて社会人として大学院へ進み研究開発に取り組むことも考えています。臨床工学技士はとても魅力的な職業です。ぜひ一度オープンキャンパスに来てください。

 

 



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