後列:若穂井さん、太田さん、伊藤さん、橋本さん 前列:牧口さん、牛崎さん、若山さん、岩城さん

 

現地の人々から多くのことを教えられた2年間

JICA(ジャイカ、国際協力機構)の青年海外協力隊が発足して今年で50年。これまで4万人以上が約90カ国の開発途上国で国際協力に携わってきた。それを記念して行われた協力隊経験者によるトークショーを、高校生記者4名が取材した。

 

「世界に笑顔をひろげるシゴト」と題したトークショーが8月8日、横浜港に面したJICA横浜で開かれ、高校生記者たちが参加した。4名の協力隊経験者が、協力隊に参加した経緯や現地での活動を通じて感じたこと、現地の「食」などについて語った。

 タイに理学療法士として派遣された伊藤弥生さんは、地域での健康促進活動などを実施。他の隊員と協力しながら高齢者向けの体操を考案し、紹介したりもした。協力隊への参加前は病院内で働いていたが、タイで地域に根差したリハビリの重要性を知った。帰国後、日本でも地域リハビリに携わっている。

 ウガンダでPCインストラクターとして活動した橋本礼生さんは異色の経歴の持ち主。若い頃には海外放浪をしたこともあり、ITコンサルタントを経て30代半ばで協力隊に参加した。協力隊に興味を抱いてから応募までに20年近く経っていたことを紹介し「興味がある人はまず願書を出してほしい」と呼びかけた。

 モンゴルで青少年活動の職種で活動したのは太田夢美さん。子どもたちに図工などを教えたり、ゴミに関するセミナーを学校で開いたりした。首都から1000キロ以上離れた任地で厳しい環境だったが「モンゴルに染まる」ことを心がけていた太田さん。その姿勢が現地の人たちに認められ、強い信頼関係が築かれていった。

 若穂井潤さんは、村落開発普及員(現在はコミュニティ開発)という職種でセネガルに派遣され、40〜50度にもなる酷暑の村に赴任。降雨量が少ない場所でも栽培可能なネリカ米の普及活動を行った。

 協力隊経験者たちは派遣国の「食」についても紹介。セネガルでも米を食べるなど日本との共通点も多かった。その一方、モンゴルではお祝い事の際、羊をまるごと一頭、頭まで食べるといった独自の食文化もあり、参加者も高い関心を示していた。

 若穂井さんは「いろいろな人に出会い、帰りたい場所ができたのは、2年間活動してよかったこと」と強調し、帰国後1年経たないうちにセネガルに「里帰り」した。家族とのかかわりの大切さやコミュニティの強さなどセネガルのよさを現地の人々から教えられ、今後はそうしたよい面を日本で伝えていきたいと思っている。

 取材終了後、高校生記者たちは協力隊経験者の話を聞くことで自分にもできることがあると思い始め、「外国人に役立つことをしたい」と前向きに語った。
 

メモを取りながら協力隊経験者の話に聞き入る高校生記者たち

 

 —– 高校生記者の感想 —–

★岩城正姫さん(東京・私立高校1年)
 学校やニュースの情報から「発展途上国は貧困だ」といった印象がありました。そのためか、あまり良いイメージでない情報ばかり流れますが、実際に行った方のお話を聞き、ある方面からだけ物事を見るのではなく、多面的に物事を見るということが大切だということを教わりました。協力隊経験者の方の話はためになり、この取材に参加して、知らなかったことをたくさん知ることができました。皆さんの行動力は「やりたいことがあるなら行動あるのみ!」という言葉を体現しているなと思いました。

★若山美月さん(東京・私立高校2年)
 日本は「本音と建て前」の国であるために、人との壁が必然的にできてしまいますが、海外では、「たとえ海外の人でも、家族のように受け入れる」といったコミュニティの良さがあるそうです。日本にそんなコミュニティの良さを広めたいという、若穂井さんの思いはとても感銘を受けました。JICAという機関を今まで知らなかったのですが、今回の取材を通して、海外でどういったボランティアが行われているかを知るきっかけになりましたし、また、日本の良さを改めて感じることができました。

★牛崎悠里亜さん(東京・国立中等教育学校5年)
 私自身は海外経験がないものの、私の高校は帰国子女がとても多く、彼らの文化や習慣を知ったり、目にしたりすることは頻繁にあります。また、NPOやNGOに所属している方や海外ボランティアの経験がある方からの講演を聞くことも多いため、「異文化を受け入れる」という姿勢がいかに重要かは知っていました。しかし今回の取材で得たことは異文化や習慣にまつわる内容だけではありませんでした。皆さん、それぞれの分野の専門職として活動されていた方々だったため、その分野を通した国の状況、人の様子などを知ることができました。また、どの方々も積極的に活動されており、マニュアルやプログラム通りに動くだけではだめなのだと確信しました。グローバル化社会に目を向けるだけではなく、自分から意見を発信したり、共有したりしようと思いました。これまで、新聞投稿欄に意見文を投稿したり、ボランティア活動に参加したりしたことは何度かありますが、今以上にその範囲を広げ、国際化社会に貢献しようと思いました。

★牧口香奈さん(福岡・私立高校3年)
 以前より興味があったモンゴル。今までは単に遊牧民族がいて、いろいろなものが整っていない国といった漠然とした印象があった。しかし今回のイベントで、学校が足りていないなどの具体的な現地の状況を聞いたことで、今までの印象が変わり、モンゴルを少し身近に感じられるようになった。医療、教育など、隊員の方の活動内容がそれぞれ違っていても、現地の人に日本の技術を伝え、現地の文化をしっかり受け入れて活動をされているということを知ることができとてもよかった。

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