部員が大切にしているパート練習。各パートの技術を向上させることが、バンド全体のレベルアップにつながるという

東京・中央大学杉並高校音楽部は、校則を厳守し、バンドを超えたパート練習を重視するマジメな部。イベントは、企画運営を学ぶ場と位置付ける。練習を訪ねると、個性をぶつけ合って作り上げる音色から、部員一人一人の音楽への思いの強さがうかがえた。
(文・山口佳子、写真・幡原裕治)]

「なれ合い」ではなくイイ音を

「リンゴ」「ゴリラ」「ラッパ」……。音楽部の部室に集まった7人が、アンプにつながっていないベースで一定のリズムを刻みながら、しりとりをする。「ほかのことを考えていても、きちんとリズムが刻めるようにする基礎練習です」と、ベースのパートリーダーの池田早織さん(3年)は至ってマジメだ。

部は週3日、ドラム、ギターなどパートごとに分かれ、校内の教室などで練習する。同じパートの先輩に質問するなど、じっくり練習できる貴重な時間。部には現在8バンドあるが、「バンドの枠を超えて先輩後輩の仲が良いのも、このパート練習のおかげかもしれません」と、部長の德田奈津さん(3年)は言う。

ライブで企画運営を学ぶ

夏と秋のコンテストや文化祭、定期演奏会など、大きなイベントのほか、他校を招いたライブも随時開催する。イベントごとに企画運営を担うリーダーが選出される。昨年の文化祭でリーダーを務めた德田さんは「部員約40人の舞台出演から裏方まで、人員配置を考えるのが大変でした」と振り返る。

 一方、ライブハウスへの出演は禁止、メークNG、遅刻をしたらペナルティーなど、あくまで高校の部活動であることにこだわる。「部活はPDCAサイクル(計画・実行・評価・改善の循環)を学ぶ場。音楽部での経験を通して、自分で企画運営ができるようになり、コミュニケーション能力もアップさせてほしい」と、顧問の大舘瑞城先生。

ダメ出しは当たり前

3年生5人の「曖昧小町」は、「物語風和ロック」をコンセプトにするガールズバンドだ。曲のストーリーをメンバー全員で考え、詞を作る。曲作りを主に担当するのは杉本茉優さん。メロディーをある程度作り上げてからメンバーに相談するというが、「ダメ出しされることも少なくありません」と、ちょっとつらそうな表情も見せる。曲作りや練習などで遠慮せず言い合うのも部の伝統。「『仲良くするのは置いといて……』というせりふがネタになっています」と大道萌香さん。

 性格も個性も違うメンバーが、ぶつかり合いながら目指しているのは、より完成度の高いバンドだ。当面の目標は、夏の東京都高校軽音楽コンテスト。「賞が取れるようにガチで頑張ります!」という島倉果鈴さんの決意に、ほかのメンバーもうなずいた。

部活データ  1963年創部。部員31人(3年生12人、2年生19人。男子12人、女子19人)=1年生入部前。入部時にはリズムテストなどが課せられる。同校の文化祭「緑苑祭」では、オリジナルCDを毎年配布。この3年間は、緑苑祭のテーマソングの動画も制作している。東京都高校軽音楽コンテストでは、毎年決勝に残っている。