国際科学五輪の日本代表のうちの6人。左から渡邉明大君(物理)、髙谷悠太君(情報・数学)、宮田一輝君(生物学)、吉村耕平君(化学)、菊池裕太君(地理)、佐伯祐紀君(数学)(8月25日、東京・霞が関=幡原裕治撮影)

世界の中高生が科学の知識や技能を競う国際科学五輪で、日本勢が快挙を成し遂げた。この夏開かれた、物理、化学など6分野の大会に日本代表として出場した高校生26人全員がメダルを獲得したのだ。栄冠の陰には、それぞれの地道な努力があった。

国際科学五輪は、7〜8月に数学、化学、生物学、物理、情報、地理の6分野が開かれ、それぞれ40〜104カ国・地域の中高生が参加した。地学は、9月に開催される。

中学時代からの挑戦実る

今回、国内予選の挑戦者は、7分野合計のべ1万8089人。予選、本選、代表選抜を勝ち抜いて代表が決まった。

 数学五輪で銀メダルを獲得した佐伯祐紀君(東京・開成高校3年)は、中学1年次から国内大会に挑戦し、毎年一歩ずつ五輪に近づいてきた。自分で探し出した過去問や米国で公開された候補問題に数多く挑戦し、今年初出場を果たした。

 「なかなか解けない問題に何時間も取り組んでいて、気分転換に入ったお風呂で『パッ』とひらめくんです。ひらめきの瞬間があったからこそ、くじけることなく続けられたと思います」と振り返る。

 問題は高校の試験とはかなり違う。化学五輪金メダルの吉村耕平君(東京・麻布高校3年)は「化学の本質を問う問題です。(本番の出来は)全然だめで、体力を使い果たしてドッとくる感じだったが、五輪に挑戦して化学が好きになりました」と話す。

カザフの生徒と仲良く

観光やディスコなどのイベントを通じて他国の出場者と交流できるのも魅力だ。

 地理で銀メダルを取った菊池裕太君(東京・筑波大学附属駒場高校3年)は、大会中にカザフスタン代表の高校生と仲良くなった。「全く違う環境で育っていることに驚くとともに、卓球が好きだったり、食の好みが同じだったりと共通項が多かったことが心に残りました」と語る。

(文・山口佳子、堤紘子)

 国際科学五輪 毎年開催され、各国代表が、筆記試験や実験、フィールドワークなどで競う。得点上位順に約1割に金、約2割に銀、約3割に銅のメダルが授与される。分野ごとに開催都市が異なる。2013年の地理五輪(京都)など、国内で7度開催。来年、三重で地学五輪が開催される。

 

                        メダリストが語る出場まで
生物学・銀メダル 宮田一輝君
(愛知・岡崎高校2年)
 「生物学が好きなので、うまくいかない時も挫折と感じたことはありません。好きなことを勉強できて楽しかったです」
物理・金メダル 渡邉明大君
(奈良・東大寺学園高校1年)
 「学校の勉強と両立が難しくて、1週間に1回は辞めたいと思っていました(笑)。大会間近に自分を追い込みました」
情報・金メダル、数学・銀メダル 髙谷悠太君
(開成高校1年)
 「ほかの人が解けるのに、なぜ自分は解けないんだ、と自分からのプレッシャーがつらかった。音楽を聴くなど気分転換をしたが、どの時間も無駄ではなかったと思います」

 

 メダリスト一覧(敬称略)
 数学  (7月4〜16日、タイ)
〈銀〉青木孔(筑波大学附属駒場)
〈銅〉的矢知樹(筑波大学附属駒場)、篠木寛鵬(兵庫・灘)、井上卓哉(開成)
 化学  (7月20〜29日、アゼルバイジャン)
〈金〉松本陽行(大阪・大阪教育大学附属天王寺校舎)
〈銀〉竹内碧(高知・高知学芸)、中塚悠(東京・私立武蔵)
 生物学  (7月12〜19日、デンマーク)
〈金〉末岡陽太朗(筑波大学附属駒場)
〈銀〉石田晴輝(灘)
〈銅〉竹本亮太(広島・広島学院)
 物理  (7月4〜13日、インド)
〈銀〉加集秀春(灘)、吉田智治(大阪・大阪星光学院)
〈銅〉髙橋拓豊(東京・小石川中等教育)、上田朔(灘)
 情報  (7月26日〜8月2日、カザフスタン)
〈金〉井上卓哉(開成)、増田隆宏(筑波大学附属駒場)
〈銅〉松崎照央(兵庫・明石工業高専)
 地理  (8月10〜17日、ロシア)
〈銀〉齋藤亘佑(開成)、佐藤剛(筑波大学附属)
〈銅〉辻有恒(灘)
 ※地学は、9月13日からブラジルで開催され、茂木隆伸君(筑波大学附属駒場高校3年)ら4人が出場する。