分かり合おうと対話を重ねる「あたたかさ」
■浅野高校Bチーム 中田侑之介さん、久保田義弘さん(ともに2年、ディベート部)
―どんな立ち居振る舞いをすることを心掛けましたか?
中田 模擬国連において、「聞く力」「言いたいことを伝える力」などの多種多様な要素が組み合わさり、一人の大使像を形成すると思います。「他者を信頼し、他者に信頼され、皆を引っ張っていく」という自分の理想の大使像を形成するため、必要な要素が何かを逆算して考え、練習会議から当日にかけて実際に行うことを常に意識していたと思います。
具体的な要素でいうと、「常に議論に全員を巻き込むこと」「全員を議論における主人公にしてあげる意識」「他国に対し意見を述べる際は肯定から入る」「その人の言いたい発言の本質を理解する」等々。これらが「信頼し信頼される」、自分の理想の大使像につながったと思います。
久保田 部活動とはいえ、各国の利益、世界の利益を第一に考え責任を持って参加しているものとしてお互いへのリスペクトを常に忘れず、論破ではなく対話を図っていく姿勢を重視しました。
こちらからお話しするときは最短で最適な表現で伝える。お話を伺うときには真摯に意味をくみ取り、深く理解する。このことを2日間通して大切にしました。
ペア間の考えをすり合わせて臨んだ
―どんな準備や練習を重ねてきましたか。
久保田 今回の議題「若者と軍縮、不拡散と平和」は歴史の浅い議論であって、統一的な議論の方向性や前例が少ないため、議題理解がひときわ難しいものでした。各国大使のそれぞれの解釈が食い違う可能性も考慮しながら議題の背景、各国の現状などさまざまなことを調べわれわれの考えを固めました。 特にペア間で「どんな大使を目指すか」「何をこの会議の意義とするか」を統一して臨みました。
中田 今会議における議題はお分かりの通り、非常に広範かつ内容も複雑なものでした。そのため、準備の過程で何度も自分たちが何を成し遂げたいかに関して道を見失ったことも数多くありました。
その点、自分たちが一番時間を費やした準備は、結論から言うと「今会議の本質の追究」です。今会議は国際社会から何が求められていて、われわれは一国を担う大使として何を話すのが最もふさわしいかという答えのない問いを常に追求し続けたことだったと思います。
話す力、聞く力が身についた
―模擬国連を始めたきっかけは?
中田 実は本当に気まぐれだったと思います。仲のいい友達が模擬国連に積極的に取り組んでおり、興味本位で話しかけにいったのがきっかけでした。そこから自分の現在のペアの友達を熱心に勧誘し一緒に始めることとなりました。
ただその何気ない「気まぐれ」を「本気」に変えさせてくれたのは、紛れもなく自分が最初に模擬国連に出た、浅野高校主催の練習会議である「浅野会議」でした。この会議は僕に模擬国連の素晴らしさを実感させてくれた会議で、今でも感謝しきれないほど思い出深い会議です。
久保田 われわれの浅野高校ではディベート部の実績が高く、先輩などからのサポート体制も充実しています。とは言っても僕が模擬国連を始めたのは本当に偶然で学校の横断幕に載ってみたいな、だったり、そんな気持ちで始めてみました。
最初は英語ディベートに興味があって、模擬国連自体は友達に言われて参加しました。しかし最初の会議だった浅野会議でその魅力に触れ、気づけば模擬国連に夢中になっていました。
―模擬国連で身に付いた力は?
2人 模擬国連を始めて一番身についたなと思う力は、やっぱり「話す力、聞く力」です。「話す、聞く」難しさは想像を絶します。
- まず、自分の言いたいことを整理して①何を言うか決める。
- そして、せっかくの発言を生かすために②いつ、どう言うのか。
この2つを常に考えるくせが、知らぬ間についていました。自分の話し方に気をつけるようになると、相手の話し方を全く違う視点から捉えられるようになります。「相手の真意は?」「背景は?」と考え、自然と最適なコミュニケーションを取れるようになりました。
かく言う私もまだまだ苦手で常に反省することばかりです。会議を重ねるたびに反省をして、次は必ず改善するぞと決めてここまでやってきました。
模擬国連というと、ディベートのくくりに入れられてしまうことがしばしばあります。けれど、僕はそうではないと思います。圧倒的なロジックで相手の論を崩す競技であるディベートと、互いのどこまで行っても分かり合えなさそうな意見同士を見つめ、わかり合おうと対話を重ねる模擬国連。僕は模擬国連のその構造的な「あたたかさ」に夢中になっているのかもしれません。
あとは、友達です! 素晴らしい実績を持った他校の友達と出会い、自分の世界を広げて向上心を育てることに役立ちました。
模擬国連の魅力に「ドップリ」漬かった
―模擬国連の魅力は?
2人 正直、言葉で表せないことが多過ぎます。そして、人によると思います。
自分は模擬国連を通じて他者と熱い議論を交わせることを始め、戦略を考えるのも大好きだし、その過程で生じるさまざまな感情もぜーんぶ大好きです。自分にとって会議の中だけでなく、そこでできた人々とのコミュニティーやつながりもまた大事な大事な財産です。自分たちは探し出したらキリのない模擬国連の魅力にドップリ漬かってしまいました。
最初も言った通り、模擬国連にどんな価値を見いだすかは完全にその人の価値観や考え方次第で異なります。ただ一つ確実に言えることは、どんな人にも絶対何かしらの大切な魅力が模擬国連には潜んでいます。ぜひこれから始める人も、今してる人も、そのお宝探しの旅に出てみてください。
―国際大会への意気込みをどうぞ!
久保田 日本代表に選ばれた者として、責任を持って臨みます。世界一を目指してペアとこれからも頑張ります!
中田 正直ワクワクが止まりません。責任を持って臨み、世界一のペアを目指して、相方ともう少し頑張ってみようと思います!