〜ミレニアム開発目標/持続可能な開発目標とは?〜

高校生記者と岡田未来さん(中央)

極度の貧困状態にある人々の数を半減させるため、2000年、ミレニアム開発目標(MDGs)が国際社会で共有されて以来、今年で15年となった。MDGs達成のため、世界のさまざまな国と組織が取り組んでおり、JICAもその1つ。現代を生きる私たちが考えるべき諸問題について、JICAの国際援助協調企画室で働く岡田未来さんに話を聞いた。

国際援助協調企画室の主な仕事内容について教えてください。

A1 大きく分けて2つの仕事があります。1つは世界各地にあるJICAに似た国際協力組織とよい関係を結ぶこと。2つ目は、世界各地で起こっている問題や課題を話し合う国際会議に参加して意見交換などを行うことです。これからお話しする「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals:以下、MDGs)」や「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:以下、SDGs)」もそのひとつです。国際会議は毎月のように行われているんですよ。


Q2 「MDGs」って何ですか?また、成功した取り組みのうちJICAが最も貢献した取り組みについて教えてください。

A2 「MDGs」とは、簡単にいうと、世界の貧しい人を減らすための目標で、「貧困の削減」という大きな課題に付随する形で、8つのゴール(目標)※1を2015年12月31日までに達成することが求められています。

 JICAは特に、2つめのゴールにあたる「初等教育の達成」に大きく貢献しました。現在も純就学率が低い、アフリカ・サハラ砂漠以南の2000万人の子どもたちに初等教育の機会を提供することを目標に掲げ頑張っています。ただ、今お話しした「純就学率」とは、人口に対して現時点で就学している子どもの割合を示したもので、最終学年まで教育を受けたことを示す割合(修了率)ではありません。これからお話する「SDGs」の4つめのゴールとしてあげられている「質の高い教育」とはまさにこれにあたります。


Q3 「SDGs」とはどんな取り組みのことですか?

A3 貧困以外にも今、世界で深刻化している問題があります。それは地球環境の問題です。例えば気候変動。日本でも近年、夏の異常な猛暑や大雨、地震や津波といった被害が起きていますが、こういった自然災害は、日本だけでなく世界中で増えています。MDGsの課題を引き継ぎつつ、そこに含まれていなかった地球環境の課題を模索する議論をSDGs(もしくはポスト2015)と言っています。MDGsでは8ゴールだったのに対し、17ゴール※2で構成されています。達成期限は15年後の2030年です。

Q4 私たち高校生ができることはどんなことがありますか?

A4 例えば環境保全なら、オゾン層を破壊するフロンガスを出す家電ではなく、ノンフロンマークがついたものを買うようにご家族に一声かけることができますね。また、森林や地下水などの天然資源の枯渇も大きな問題ですから、資源を大切にする、無駄遣いしないということを意識し、行動することもとても大切だと思います。

 少し話はそれますが、理系の人はこれからますます求められると思いますよ。特に気候変動に関わる研究は、今後いっそう盛んになるはずです。壮大なものでなくても、携帯電話や太陽光でつくソーラーランタンなど、途上国の人たちが無理なく使えるテクノロジーの開発・研究なども今後行っていってほしいと思います。

※1〈MDGsの8つのゴール〉
達成期限:2015年末
1.極度の貧困と飢餓の撲滅/2.初等教育の完全普及の達成/3.ジェンダー平等推進と女性の地位向上/4.乳幼児死亡率の削減/5.妊産婦の健康の改善/6.HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止/7.環境の持続可能性確保/8.開発のためのグローバルなパートナーシップの推進
★MDGs達成に向けたJICAの取り組み
http://www.jica.go.jp/aboutoda/mdgs/index.html
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※2〈SDGsの17のゴール〉
達成期限:2030年末
1.貧困撲滅/2.飢餓・食糧安全保障・栄養・持続可能な農業/3.健康な生活、福祉/4.質の高い教育・生涯学習/5.ジェンダー平等・女性のエンパワーメント/6.水と衛生/7.エネルギー/8.経済成長・雇用/9.インフラ・工業化・イノベーション/10.不平等削減/11.都市・居住/12.持続可能な消費と生産行動/13.気候変動/14.海洋資源・海洋/15.生態系・森林・砂漠化・土地・生物多様性/16.平和で包摂的な社会・正義・能力のある組織/17.実施手段・グローバルパートナーシップ

 

—– 高校生記者の感想 —–

★牛崎悠里亜さん(東京・国立中等教育学校5年)
 中学生のときMDGsについて学んだことがあり、そのときは、達成期限までにすべての問題が解決されるだろうと思っていました。しかし期限を間近に迎えた今、少しずつ解決されているものの、新たな問題は次々と発見され、減るどころか増えているという事実を聞き驚きました。また、あるひとつの問題にも、その裏には複数の問題が複雑に絡み合っているものもあり、そう簡単に解決ができるものではないということを知りました。

 また、このような世界の問題を解決するためには、言語能力に優れている人、統計やデータ処理能力に優れている人、データをもとに論理的な説明ができる人、理系の能力に長けている人など、さまざまな人の力が必要だということを学びました。今回の取材を通して、私も普段から世界や社会問題などを意識し、日々の学習に取り組んでいこうと思いました。

★前田 黎さん(東京・私立高校2年)
 今回の取材を通して第一に感じたことは、国と国をつなげるということは、人と人をつなげることの延長線上にあり、そう大きな違いはないのではないかということでした。 

 取材前は、「国と国をつなげる架け橋」という言葉に「なんだか難しそう…」と感じていました。双方の間に「条約」のようなルールがあって、合理的でデジタルに進められていくようなイメージがありました。しかしお話を伺っていると、実際は、無機的なやり取りで進められているのではなく、国際会議などで意見交換をして「人」と「人」とのつながりを持つところが出発点となっていることを知りました。今や、さまざまな電子機器が発達し、地球の裏側にいる人とも簡単に連絡を取ることができる環境のなか、アナログなやり取りが大切にされていることに驚いたとともに、「人間の温かみ」を感じました。


◆JICAは、途上国の現状や現場で活動する人々の姿を紹介する広報誌『mundi』を毎月発行しています。12月号は、「SDGs」を特集予定。ぜひ、ご一読下さい。
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http://www.jica.go.jp/publication/mundi/index.html