国立の東京工業大学と東京医科歯科大学が10月1日に統合し、「東京科学大学」が発足した。経営トップの大竹尚登(おおたけ・なおと)理事長は1日にあった記者会見で「世界最高水準の科学大学になる」と目標を語った。理工学と医歯学などの連携を進め、「コンバージョンサイエンス」(融合科学)を実現するほか、教育や入試も新しい取り組みを構想している。(文・写真 西健太郎)

「東京科学大学」発足の記者会見に臨んだ大竹尚登理事長(右)と田中雄二郎学長(10月1日、大岡山キャンパス)

大学院生数は国立4位、略称「Science Tokyo」をアピール

新大学は学生数が約1万3000人、教職員数は約5600人。中でも大学院生数は約7100人で、東京大学、京都大学、大阪大学に続く国立大学4位になり、国内有数の研究大学となる。日本語略称は「科学大」だが、英語略称の「Science Tokyo」を国内外でアピールしていきたい考えだ。

理工学と医歯学の学生が共に学び交流する授業も

学部や大学院にあたる教育組織は、理工学系(旧東工大)の6学院と、医歯学系(旧東京医科歯科大)の2学部2研究科を当面引き継ぎ、定員や入試も変更しないが、カリキュラムを改革する。入学直後に学ぶ志を育む科目「立志プロジェクト」を全学生必修として、学部、大学院のそれぞれで自身の専門と違う分野を学ぶ教育プロジェクトも始めるなどして、理工学と医歯学の学生の交流を促す。

「文化の違い」学生に驚きと刺激

前身の2大学は「文化の違い」があるというが大竹理事長も田中雄二郎学長も違いを前向きにとらえる。田中学長は2大学の学生の交流の場で「医科歯科大生は、東工大の学生の突き抜けた研究をしたい志から刺激を受け、東工大生は医科歯科大生の明確なキャリアプランに驚き、参考にしようとしていた」というエピソードを明かし、新たな出会いから「驚きと発想がうまれ、イノベーションの礎ができる」と期待を語った。

「東京科学大学」発足の記者会見に臨んだ大竹尚登理事長(右)と田中雄二郎学長

新研究所設け「医工連携」を推進

新大学は「科学の発展」と「人々の幸せ」を理念に掲げる。研究面では、「コンバージョンサイエンス」を目指す。産学連携に力を入れる新組織「新産業創成研究院」を新設し、理工学と医歯学の研究者による医工連携も研究所を設けて推進する。若手研究者から40以上のプロジェクトが生まれているといい、手術支援ロボや新薬の研究も動き出す。大竹理事長は学内に人文学や社会科学の研究者もいることを強調し、「文化の発展」にも貢献するとした。

「チャレンジ精神旺盛な学生に来てほしい」新入試も構想

田中雄二郎学長は「統合という大きなチャレンジをした。チャレンジ精神旺盛な学生に来てほしい」と受験生への期待を語った。そうした学生が評価される入試も構想するほか、海外大志向の学生にも選んでもらえるよう、在学中に海外大で学べる制度を整備する考えも示した。大竹理事長は「多面的な視点をもっていると、大学に入学したときに(学び方が)全く違う。頭の使い方を鍛えてほしい」と受験生への期待を語った。

「東京科学大学」の大竹尚登理事長(右)と田中雄二郎学長。大岡山キャンパスに新たに設置された看板の除幕後に

「国際卓越大学」目指す方針

新大学は国立大学法人としては初めて、経営トップの理事長と教育・研究などを統括する学長を分けて経営を強化する。統合担当の幹部職を設けて「文化が違う」旧2大学の「融和」を図る。世界トップレベルの研究水準を目指して国の支援を受ける「国際卓越研究大学」に申請する方針も明らかにしている。