優しく淡い歌声と、どこだか懐かしさを伏せ持つ楽曲が若者世代の人気を集めるソロミュージシャン・にしなさんに高校生記者がインタビュー。「緊張のほぐし方」や「交友関係の悩み」など高校生から寄せられた悩みに対し、丁寧で温かいアドバイスを贈ってくれました。(取材・高校生記者=ウグイ・ここっと・マーニー・翠、構成・藤原春)

壁にぶつかったらリラックス

―高校生からの質問です。「にしなさんが壁にぶつかったと感じるのはどんな時ですか?」

音楽を頑張っていて、思うように制作が進まないと悩みます。いい曲作ろうって思っても何が「いい曲」なのかわからなくなってしまうときとかですね。

―壁にぶつかった時は、どうやって乗り越えているのでしょう。

落ち込んでいたら無理に元気を出そうとはしないことが多いです。好きなことをして1回リラックスする時間を設けます。音楽を聴いたり、友達と会って関係ない話をしたり、ファンタジーやヒーローものの映画やアニメを見たりします。

日本語じゃない曲が聴きたくなることもあります。音楽に限らず、生きているとハッピーなものも、アンハッピーなものもたくさんの情報が自然と入ってきますよね。自分のテンションが下がっていると、いろいろなものに過敏に反応しちゃう。だから目や耳に入る情報を減らしたくて、すぐに理解できない言語の曲を聴くんです。そうしてテンションを上げています。

卒業式のライブが原点の一つ

―二つ目の質問です。「高校生時代に影響を受けたアーティストはいますか?」

たくさんいるのですが、ハナレグミさんやクリープハイプさん、RADWIMPSさんには特に影響を受けました。声、歌詞、メロディー、曲の雰囲気全てにおいて、おのおのの色がしっかりある。それぞれ「オンリーワン」な感じがとっても魅力的だと思っていました。

特にRADWIMPSの野田洋次郎さんがハナレグミさんに楽曲提供した「おあいこ」は大好きな曲です。それぞれにしか出せない色や個性が絡み合った楽曲に衝撃を受けました。

にしなさん

―高校時代のライブの経験が、今につながっているそうですね。

高校卒業の時、初めて友達の前でライブをした時の曲がクリープハイプさんの「オレンジ」でした。それまで高校の文化祭ライブなどはあったものの、恥ずかしがって出ていなかったんです。でも卒業ライブは本当に最後の最後だからと思って、友達に誘われて2人で出ました。みんなが喜んでくれた経験が、自分が音楽を始めていく一つの大きなポイントになっています。

―楽曲制作に込めている思いや、伝えたいメッセージなどはありますか?

「すてきなメッセージ」みたいなものはあまり意識せずに楽曲を作っていることが多いです。みんなが遊ぶ感覚と同じように楽曲制作をすることが結構多くて……。自分らしく自由にステージに立って、音楽をやることで「あ、あいつあんな感じで頑張ってんだ。こっちもちょっと頑張ってみようかな」なんて思ってもらえたらすごく幸せなことだなと思います。

ステージは「野球選手」を想像

―三つ目の質問です・「ステージに立つ時、緊張はどうやってほぐしていましたか?」

初めてステージに立った時は本当にもう緊張の嵐で、ほぐし方とかなかったです。でも振り返ると、うまくいかなかったことが糧になって、成長したなと思います。うまくいく、いかないよりも踏み出すことが大切。「ステージに立った時点で100点」くらいに思えたらいいのかなと。

―今でもステージでは緊張しますか?

いつも緊張します。でも最近はステージに立つ時、レコーディングの際にスタッフの方が教えてくれた「野球選手はすごい。練習を重ねてバッターボックスに立つけれど、打つ瞬間はもう全部忘れてやるんだよ」という言葉を思い出します。

本番まではたくさん頑張るし、成果を発揮できるかどうか緊張する。でも、ステージに立ったらもう何も考えず、「全てを忘れて楽しむこと」に重きを置くよう意識しています。始まるまでは緊張が大きいけれど、始まったら「楽しい」が勝ちますね。

気が合わなくても「それはそれ」

―四つ目の質問です。「私は友人関係が広く浅い感じで、どうやって友達を遊びに誘えばいいのかが悩みです。にしなさんは高校時代どんな交友関係がありましたか」

高校時代はバトミントン部でかなり打ち込んでいたので、その流れで自然と部活の友達と一緒にいることが多かったと思います。あとは入学式の時に話しかけた友達と今でも仲がいいです。

―話しかけるときに緊張してしまうことも多いと思いますが、話しかけるコツなどはありますか?

「こっちも緊張しているけど、向こうはもっと緊張しているかも」と思って話しかけてみる。私は入学式の日そう思って話しかけました。あとは、もし話しかけた子と気が合わなくてもそれはそれ。「人間同士だから仕方ないなぁ」みたいな感じ割り切ってもいいのかも。いっぱい話しかけたら絶対中にはすごく仲良くなれる子もいるはずだから。

気分が乗らないときは「諦める」

―最後の質問です。「やらないといけないことがあるのに気分が乗らない時は、どのように対処していますか」

「これは絶対にやらなければいけない」っていう時以外は、「諦めて、頑張らない」というタイプではあります(笑)。ただ、本当にやらないとやばい時はとりあえず1回集中してやってみる。うまくいかなかったらやっぱり1回休憩を挟んで、思考を変えてまたトライする。その繰り返しをしている気がします。

―高校時代のテスト期間や受験勉強の際はどうしていましたか?

テスト期間は追い詰められて、必死になんとかしていました。私の通っていた学校は、一週間前になると勉強計画表を学校の授業で書かないといけなくて。それを数日前か当日に見返して、逆算してみて「やばい!」と焦り始める感じでした。これは今でもあまり変わらないかも……「余裕を持ってやりたいな」という意識はあるけれど、結局ギリギリになるパターンが多いです。

受験勉強は同じく必死にやっている感じだったけれど、休むタイミングも大切にしていた気がします。例えばアニメや映画を見る息抜きの日を作るとかですね。こんな無責任なこと言っちゃいけないのかもしれないけど、今思うと、「この日は遊ぼう」って決めて、その日を楽しみに頑張るのもありだったのかもしれません。

にしな

1998年生まれ、東京都出身。2021年、Spotifyがその年に注目する次世代アーティスト応援プログラム「RADAR:Early Noise」に選出され、同年4月に1stアルバム『odds and ends』をリリース。最新シングル「plum」が配信中。今年11月からは全国ツアーも開催予定。

にしな Zepp Tour「SUPER COMPLEX」

  • 11月10日(日)Zepp Sapporo
  • 11月15日(金)Zepp Namba(OSAKA)
  • 11月17日(日)Zepp Fukuoka
  • 11月26日(火)Zepp DiverCity(TOKYO)
  • 11月27日(水)Zepp DiverCity(TOKYO)
  • 11月29日(金)Zepp Nagoya