飛び切りの笑顔でステップを披露する部員たち(4月23日、滋賀農業公園ブルーメの丘

京都・京都橘高校吹奏楽部は、マーチングの強豪校で、迫力ある演奏と衣装の色から「オレンジの悪魔」とも呼ばれている。来年1月には、米国で開かれる最高峰のパレードイベント「ローズパレード」にアジア・オセアニア地区代表として2度目の出場を果たす。栄誉の原動力となった激しい「ステップ」で見る人を魅了している。(文・写真 白井邦彦)

高速のステップワーク

約110人の音楽隊が花畑を抜けていく。時々、歩を休めて軽やかなステップを刻み、ジャズや行進曲を奏でると観客に笑顔の花が咲いた。取材時(4月、滋賀・ブルーメの丘)のパレードはまさにエンターテイメントだった。

全日本マーチングコンテスト高校生の部で、過去3回の金賞受賞経験を誇る同校。特徴は、オレンジのミニスカートが舞うほどの激しい高速のステップワークだ。特に代名詞とも言える軽快な「シング・シング・シング」の演奏は国内外から高い評価を受けている。

もも上げしてすぐ演奏

激しく動いても、音がぶれることなく演奏できるステップワークを実現させているのが、強靱(きょうじん)な体幹だ。部長の石田亜海さん(3年)は「もも上げをした後、息切れしている状態で演奏もします。左右交代で片足キープを5分間しながら演奏することもあります。何かと体幹や脚を鍛えながらの練習が多い」と話す。

単に走りこむなどの体力強化はせず、動きながら演奏することでスキルと体を同時に磨くのが京都橘流。グラウンドでの練習では、全員のステップの足並みをそろえるのに2時間以上かかるときもあるという。その間ずっと足を動かしながら、笑顔での演奏を続けなくてはいけない。この地道な練習がファンを魅了するマーチにつながる。

目標は金賞よりも経験

全日本マーチングコンテンストでの金賞をゴールに定めると、その先の成長も止まる。顧問の田中宏幸先生が「いろいろな経験を生徒たちにさせたい」と言うように、賞よりも経験を重視している。今年の京都橘は全日本の後に米ディズニーランドでのクリスマスパレードや、来年1月に米カリフォルニアで開催される「ローズパレード」への参加を控えている。

 
 

 

【部活データ】
1961年創部。部員113人(3年生33人、2年生39人、1年生41人)。全日本マーチングコンテスト金賞3回(2008、09、15年)、銀賞3回(07、11、14年)。2004年には米ディズニーランド開園50周年クリスマスパレードに出場。