親子で進路についての方向性が異なると、話し合いもなかなか進みません。20歳で学習塾を創業し、4000人以上の生徒を直接指導してきた石田勝紀さんに、読者の高校1年生から寄せられた「親に進路を伝えられない」というお悩み相談に答えてもらいました。

【お悩み】親に進路を伝えられない

私は小学生の頃、病気を見つけ、人々を助けることができる医師に憧れました。しかし、そのことを両親に伝えると「お前は頭が悪いから無理だ」と言われ、それから親に将来の夢や進路について話すことが怖くなりました。

親に進路のことを話せない(写真はイメージ)

今は数学か理科の教師になりたいと思っていて、そのために高校では理系を選択し、高校卒業後は大学に進学したいと考えているのですが、親にどのように伝えれば良いかわからず、困っています。

子の進路選択を親が応援してくれている状態が理想だと思います。高校生が親と進路選択について話し合う際に、どう話を持っていけばよいのか、何を意識しどう行動すればよいのか、アドバイスいただきたいです。(ゆず・高校1年女子)

親から「試されている」と考える

こんにちは。石田勝紀です。高校生が自分の意思で選択したい進路を、親から否定されるとつらいですね。本来は、最も身近な存在である親が子どもの応援団でなければならないです。しかし、一方で、こういう考え方もあります。

子どもの意志がどこまで強いのか、それを試されているということです。親は保護者である以上、子どもの幸せを願っていることはほぼ間違いありません。ただ、幸せを考えるあまり、苦労をしてほしくない、嫌な思いをしてほしくないという気持ちが湧き出てきます。その結果、子どもが選んだ進路を否定することもあります。

親に向けてプレゼンする

そこでゆずさんとしては、まず親の愛情は根底に感じながらも、自分は親の言葉によって試されていると思ってください。つまり、「『本気』でその道を選ぶのか?」ということです。この意志の強さがあれば親を説得することは可能です。

親にプレゼンをして説得しよう

ただし、家庭によってはさまざまな状況があると思います。例えば、家庭の資金的に学費を賄うことが難しいことや、家庭内に理系がいないため親が不安がるなどです。そこでこれらの障壁も考慮にいれながら、親に向けてプレゼンテーションを行ってみてください。プレゼンテーションですから、雑談の延長で話はしません。軽く話をすることもしません。家族会議を自分で主宰して行うイメージです。本気でその道に進みたいのであれば、やれるはずです。それをちゅうちょしているとしたら、大して本気ではなかったということになります。人間は本気になると行動できますし、「必ず」行動します。

では、どのような感じで進めていくか順にお話しましょう。紙とペンを用意してまずは下書きです。

【1】将来の夢への動機を整理する

なぜ数学か理科の教師になりたいのでしょうか。その理由を書いてください。ただ数学が好きとか、理科に興味があるというのは理由にはなりません。例えば、「世の中には理数のセンスがあるのに周囲の反対で文系に進まざるを得ない女子や、理数ができればもっと世界が広がる体験ができるのにそれができない子どもたちに理数の楽しさを教えてあげたい」などです。もちろん、これは例なので、このまま使うのではなく、自分の思いを書いてください。

希望の進路の理由を書き出そう

【2】志望校をいくつか選ぶ

目標校を複数設定します。そのためには各大学の情報を集め、その大学になぜ決めたのかという理由を書きます。例えば、「◯〇大学△△学部は実験設備が充実している、〇〇という教授について学びたい、教員養成では実績がある」などです。

【3】その大学に合格するための計画を立てる

まだ高1なので、詳細に書く必要はありません。例えば、「高1の段階では数学に力を入れて、クラス順位は5位以内に入るようにする、高2での選択は物理と化学(大学入試の必須科目であるため)、高3では学校の授業と先生を利用し、可能な限り塾に行かずに学力を上げていく」などです。

以上を紙にまとめてそれを親に見せながら、説明をしていきます。それでも、親が否定をしてきたとしたら、試されていると思ってください。自分の人生は周囲の意見も参考にはしますが、自分で決めていきます。その覚悟があれば、親も応援してくれるはずです。

 
石田勝紀さん 
いしだ・かつのり 教育者。教育デザインラボ代表理事。著書執筆・講演活動を通じて、学力向上のノウハウ、社会で活用できるスキルやマインドの習得法を伝える。『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば
』(集英社)など著書多数

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