ライブやミュージカル、演劇など、高校生のみなさんも「推し活」などでコンサートホールを訪れる機会があるだろう。今回は、池袋駅前にある東京芸術劇場を訪問し、コンサートホールを中心に、劇場のスタッフしか入れない場所まで見学。どうやって芸術を届けているのか、リポートする。(文・高校生記者・そうよう=3年、写真・東京芸術劇場提供)
東京の空が広がる開放的な空間
「中高生のためのクリエイティブCAMP(通称ゲゲキャン)」は、東京都と東京芸術劇場が中高生をターゲットにワークショップなどを行うイベントだ。私は、数ある中から「劇場ツアー」に参加し、コンサートホールを中心に、劇場の外から「スタッフオンリー」の場所まで巡った。
東京芸術劇場は、大小4つのホールとギャラリーなどから成る複合芸術施設だ。コンサートホールが地上7階に位置している珍しいつくりで、3階客席(地上9階)の扉の前は東京の空が一面に広がる開放的な空間になっている。
「1%フォー・アート」という、公共建築の費用の1%をその建築に関連・付随する芸術・アートのために支出する考えがある。東京芸術劇場の建築にあたってはこの考えを率先して採用され、絵画や彫刻が飾られている。特に、コンサートホールの入り口にある3つの天井画やホワイエのガラスの彫刻は、立派さと美しさに「おおっ」となるのに、館内と調和しているのがとても印象的だった。鑑賞する演劇やコンサートだけでなく、劇場そのものの非日常感やワクワク感も楽しめること間違いなしだ。
「ホ―ルそのものが楽器」音の響きに感動
ツアーでは「ホールそのものが楽器」という話があった。楽器や歌声の余韻を感じられるように緻密な設計がなされているそうだ。音の響きを体験するため、手拍子をさせてもらった。3回「パンパンパン」と手拍子をすると、響きがホールにぶわっと広がり、その後にしんとした余韻が残るのが印象的だった。そよ風が吹いたような感覚で、とても耳に心地よかった。
「嫌なことがあったら、いつでも劇場の世界に逃げてきて」
東京芸術劇場で働くスタッフによると「中高生を劇場で見かけることは少ない」そうだ。「今は何でもスマホやパソコンの2次元の世界で見られるけれど、劇場に足を運んで生の体験をしてほしい」「家や学校で嫌なことがあったら、いつでも劇場の世界に逃げてきていいんですよ」との言葉をもらった。
仕事について話すスタッフのみなさんはキラキラしていて、自分も「将来こんな風に働きたい!」と心から思える充実した時間だった。今回のイベントはリアルな体験だからこそ味わえる楽しさでいっぱいで、あっという間の時間だった。