大学受験を控える高校生には、志望する学部が定まらない人も多いはず。20歳で学習塾を創業し、4000人以上の生徒を直接指導してきた石田勝紀さんに、読者から寄せられた「学部の絞り方がわからない」という悩み相談に答えてもらいました。
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【お悩み】いろんな学部を受けてもいい?
実家から通学できる範囲内の大学へ進学したいと思っており、興味がある学問分野がたくさんあります。このままいろんな学部や学科を受けていいのか、何かを諦めて絞るべきなのか悩んでいます。
小さい頃から日常的にテレビドラマや映画を見ていて、「映像制作に関わりたい」という思いがわき映像学に興味があります。衣食住に関する分野のほか、「資格があると安定した職に就けそう」という思いから栄養学(管理栄養士)、法律の正しい情報を学びたい気持ちから法学にも関心があります。
入試方式は確定していませんが、今のところ一般選抜を受ける予定です。受験に成功する人は、学部をどの程度、絞っているのでしょうか。絞り方も教えていただきたいです。(むにゅ・高校2年女子)
あなたの関心は衝動的?
こんにちは。石田勝紀です。やりたいことがたくさんあることはとてもすてきなことですね。自分は何をやりたいかわからないという高校生がたくさんいる中で、これだけ興味関心領域が広いということは今後が楽しみです。
とはいうものの、進路は基本的に一つです。その後の人生において、他分野に広げていくことはありますが、大学進学という視点から言えば、一つの分野ということになります。
さて、そこで始めに考えたいことは、むにゅさんはこれらの関心分野に対して、次のどちらにあたるでしょうか。
「一時的で衝動的にひかれた分野」か「自分にあった分野」か。
「本音の動機」を探ってみよう
一時的な衝動による動機は長く続きません。表面的な感動だけで、心が動き、実際にそれをやってみると「思っていたことと全然違っていた」ということがあります。
「資格があれば安定」という基準で選んだ道も同様です。心からやりたいとは思っていないので、資格は取れるものの、活躍するまでには至ることは少ないのです。本気で自分がやりたいことがあって、それには資格が必要だということで、資格は取るものです。安定できるからといって資格をとると、同じことを考えて資格を取る人だらけになっていくので、結局、競争率が上がり、安定ではなくなるのです。
法律の正しい情報を学びたいという気持ちは大切なことです。しかし、それであれば本を読めばよいわけで、大学進学を法学部にするかどうかは考えた方がいいでしょう。法学部に行き、そこで学んだことが実社会で役立つためには、動機が必要です。例えば、「困っている人を法律で助けていきたい」「世の中に正義を広めていきたい。そのためには法律の知識が必要であり、また資格も必要」などです。このような動機がある人は、深く、広く学ぶことができ、しかも自分の将来の道につながります。
さて、このように考えていくと、むにゅさんは、映像学など、メディアについて志望に種があるようですね。「小さい頃から映像に関わる仕事がしたい」というのがまさに、本音の動機の部分です。
絞り込めば力が発揮できる
以上のように考えていきながら、自分の本心を探り、絞り込みをしてみてください。絞り込みが大切な理由は、エネルギーの分散をしないことにあります。
例えば、虫眼鏡で太陽の光を集めて、黒い部分を焦がすということをやったことがあると思います。焦点を絞り込んでいくと太陽の光が集まり強烈なエネルギーとなり、焦げていきますよね。でも焦点をぼかすと、やんわり温かくなるものの、いつまでも焦げることはありません。エネルギーが分散してしまったからです。人は、絞り込み、そこに1点集中すると異常な力を発揮します。ですから、分散よりも集中が大切になります。そのためには絞り込むのです。
ただ、映像関係だと、志望校の数が少なく、倍率も高いということが考えられます。むにゅさんはメディア関係の分野など、映像から派生した領域や関係する領域に興味はありますか? 興味の幅を広げていくと、志望校の選択数が増え、受験の安心感がでてきます。ただし、関連した領域に少しだけ広げる感覚でやってみてください。
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いしだ・かつのり 教育者。教育デザインラボ代表理事。著書執筆・講演活動を通じて、学力向上のノウハウ、社会で活用できるスキルやマインドの習得法を伝える。『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』(集英社)など著書多数。