3DCGを使った動画技術を持つ三宅智之君(埼玉・早稲田大学本庄高等学院2年)は、中学時代に作ったSFの短編映画がクオリティーの高さで話題になるなど、早くから才能を開花させた。社会を変革するICT(情報通信技術)分野の技術開発を支援するプログラム「異能vation」(総務省主催)に最年少で採択され、国の後押しを受け日本の映像業界を盛り上げる研究を続けている。(文・写真 野村麻里子)
中高生でもCGは作れる
2016年度の「異能vation」には1218件の応募があり、三宅君は最終選考通過者10人の中の一人。建物の破壊映像のリアリティーを追求。さらに、製作過程や作ったデータをオンライン上に一般公開することで、3DCGに興味を持った人が簡単に学び始められる環境づくりを目指している。
3DCGが作れないと、車を爆発させるシーンを描けないなど、映像表現が制限される。「3DCGは、中高生でもフリーソフトで作れることを知ってほしい。昔の日本は特撮技術で世界のトップを走っていたが、3DCGに代わってから遅れている。僕らの世代が大人になったとき、3DCGの基礎が身についていたら日本の映像業界がにぎやかになるのでは」
技術習得は全て独学
動画作りに興味を持ったのは、小学1年生の時に見た映画「ALWAYS 三丁目の夕日」がきっかけ。メーキングを収録したDVDを見て、模型と実写と3DCGを組み合わせたVFXという映像表現を知った。「現実ではあり得ない、または撮影が困難な映像を作り上げられると知り、やってみたいと思った」
小学校時代に、校舎の模型を作って特撮に挑戦したり、合成画像を作ったりしてきた。3DCGは小6で始めた。専門書や解説動画を見て、独学で技術を磨いた。中学3年の時に学校の自主研究で作った、近未来の世界を描いた動画「2045」はYouTubeで約135万回(4月時点)も再生されるなど、大きな反響を呼んだ。動画がきっかけとなり、憧れだったALWAYSシリーズの山崎貴監督に会うこともできたという。
文化祭の設営でCG駆使
同校は「自由な校風で好きなことができる」ため、第1志望だった。1時間半の新幹線通学をしているが苦にならない。部活は映画部、演劇部、美術部の掛け持ち。「役者の気持ちを知るため」「絵コンテを描くため」など、全て映像作りに役立つと思い、入部した。映画部では新入生勧誘のための短い動画を作ったところ、反響を呼び、新入部員が多く集まった。「未経験だが、3DCGをやってみたい」という声に応え、勉強会を不定期で開いている。
昨年の文化祭でクラス企画のお化け屋敷を催した際にも、スキルを発揮。教室の設営日が1日しかなかったため、あらかじめ3DCGで教室を再現してシミュレーションした。机や椅子、備品などの必要な数があらかじめ分かったため、設営がスムーズに進んだ。
将来ハリウッドで学びたい
「自分の頭の中のアイデアや想像を、映像としてみんなと共有できることが楽しい!」という。 将来はハリウッドに行き、技術を学び日本に持ち帰ることを思い描く。「映像技術は数十年単位で変わっていく。常に時代の最新の技術に携わりたい」