積み重なった漫画に囲まれ、こちらをじっと見つめる少女。この作品は、第47回全国高校総合文化祭(2023かごしま総文)の写真部門に出品されました。撮影した石井そらさん(埼玉・坂戸高校3月卒業)に、どのように撮影したのか聞きました。

漫画に溺れる少女(第47回全国高等学校総合文化祭 写真部門出品)

大好きな妹と漫画を撮影

―作品のテーマを教えてください。

「自分の『大好き』を自分の好きなように写真で表現する」というテーマのもと、大好きな妹と漫画のコラボレーションを撮りました。

高校1年のときは風景写真を中心に撮っていたので、この写真を撮った高校2年では人物写真を撮ってみようと目標を立て、「こんな写真が撮りたい」「このアイデアは実行できるだろうか」などノートに日頃からメモを取っていました。

そんな時、小学5年生から集めていた漫画の合計冊数が400冊を超えたのをきっかけに、漫画が使える写真の構図を考えてみようと思いました。そこからはアイデアをひたすらネットで探しました。角川武蔵野ミュージアムの写真を参考に漫画で人を囲み、その人が目立つように構図を練りました。モデルに妹を選んだ理由は、気軽にポージングの指示が出せるからです(笑)

お化けライトで顔を引き立たせた

―こだわったり工夫したりしたポイントはどこですか?

光の当て方とモデルのポージングです。光は、顔の真下とカメラの位置から当てています。「お化けライト」と呼ばれる位置から当てることで、顔を引き立たせています。

モデルのポージングは下からにらむようにすることで、「漫画を読むのを邪魔しないで」という怒りの表情を引き出しました。題名通り、漫画に溺れている状態を表現できました。

―難しかった点、苦労した点は?

光の当て方の調整と、光源の位置です。光を一部に当てすぎると白飛びしてしまい、顔の輪郭が無くなってしまうなどのハプニングがありました。

顔下の光源をどう隠すかも悩みました。週刊誌を置いたらしっくりきましたが、顔の周りのアーチが少々作りづらくなってしまいました。最終的にはなんとか上手に仕上げることができました。

200冊の漫画タワー「見た目以上に繊細です」

―制作中、印象に残っているエピソードはありますか?

モデルの後ろのタワーは漫画本でできています。タワーの前で、モデルがうつぶせ状態から肘を立てながらポーズをとっています。タワーは床からそれなりの高さがないと写真のフレームに映りません。5つあるタワーで200冊ほど使っていますが、見た目以上に繊細で、少し足が当たっただけで崩れることが1日に2、3回はあり、そのたびに積み直しました。

―よい作品を作るためのコツ、上達のためにおすすめの練習方法を教えてください。

まず、撮りたいものをメモすることです。実行できるか否かはいったん置いておいて、メモすることが大事です。それから撮りたいものを引き立たせる構図をネットやSNSなどで探し、自分の目指す構図に近いものを参考にすることで、いずれはオリジナリティーが出せるようになると思います。