子どもを支配したり暴言や暴力などによって傷つけ、悪い影響を及ぼす「毒親」に悩む子どもたちがいる。高校生記者のエリさん(仮名・2年)も、物心ついたときから弟ばかりが大事にされることに、つらい思いをしてきた。なぜきょうだいで扱いが違うのか。母に問えないまま、歯がゆい思いを抱えている。
母は「毒親」 弟ばかりかわいがる
エリさんは自分の母を「毒親」と感じているという。しかし、ニュースで見るような虐待はなく、育児放棄もされていない。「はたから見れば『毒親』は言い過ぎだと思われるかもしれません。それでも、母は私にとって『親』と言いがたい存在です」
エリさんには2歳下の弟がいて、いつも弟ばかりが優遇されてきた。例えば、きょうだいでけんかをした時。弟にいくら殴られ、蹴られても、謝るのはいつもエリさんだった。「『きょうだいで差をつけて育てたくない』と母は言いますが、いつも『あなたの方が年上なんだから』と私に謝らせてきました」
失敗した時も、弟は謝れば許してもらえるが、エリさんは許してもらえない。「丁寧に謝っても『謝るだけで許すわけないでしょ』と言われます。でも、次の日には母は怒ったことを忘れています」
スマホを買う際にも弟は優遇された。エリさんは3年も頼んでやっと買ってもらえたのに、「弟は何の努力もせず、私と同時に買ってもらっていました」。
エリさんにはGPSや時間制限などがあるが、弟には制限をかけなかったという。
差別の理由を母に聞けない
「母はそれでも放任主義で、家にいる時は基本寝ています。ご飯は作ってくれますが、同じ家にいるのに、話すことはほとんどありません」。そんな生活を16年送ってきて、なぜこんなに差別されるのかずっと不思議だったが、理由を聞けないままだ。
父を頼ることも考えたが、仕事の都合で顔を合わせる日はほとんどない。父の休日は日曜しかないが、その日曜でさえ仕事に行ったり、弟の部活の試合を見に行ったりして、頼れる状況ではないという。
「血はつながってない」と思い込むように
そのうち鬱(うつ)っぽくなり、家出を計画したり、母への殺意や、自ら死にたい消えたいという考えが浮かんだりするように。「好きな漫画が完結するまでは生きようと、毎日耐えていました」
母との関係についてたどり着いた答えは「血がつながってないと思い込む」こと。「もちろん、実際には血はつながっていると思います。ですが『母とは血がつながっていない。実の子ではないからこのような行動をとるのだ』と思うことで精神的負担は減りました」
親自身のコンプレックスを子で解消?
きょうだい間での差別は、なぜ起こるのだろうか。
スクールカウンセラーを務める臨床心理士の大倉智徳さんによると、「非常に残念なことですが、きょうだい間で容姿や性格、能力に違いがあることで、親が子どもを差別することはあります」。親自身の性格や容姿の嫌いな要素が子どもにある場合や、親の期待が特定の子どもに高い場合に、一方の子どもが差別されるというケースだ。「親が自分自身の強いコンプレックスを、子どもで解消しようとしている印象を受けます」(大倉さん)
専門家の支援を検討しよう
差別を感じた子どもは、その経験によって自己肯定感が低くなると考えられる。自己肯定感を高めるためには、趣味や興味のあることを追求して自分に価値を見いだすこと、友人や信頼できる大人との関係を築くことが望ましいという。
「心理的な苦しみが強い場合は、専門家の支援を受けてもよいと思います。自分の心身の健康と幸福を最優先に考えることが大切です」(大倉さん)
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こども家庭庁「親子のための相談LINE」
子育てや親子関係について悩んだときに、子ども(18歳未満)とその保護者の方などがLINEで相談できる窓口。匿名でも相談可。
きょうだい差別・毒親に関する体験談を募集します
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