友達の家の庭で。庭にある小屋のグリルで肉やマシュマロを焼いて、友達の誕生日を祝った(右端が中川さん)

私は、昨年の夏まで1年間、フィンランドの小さな村の学校に留学した。こぢんまりとした村の人間関係は、東京では想像もつかないほど深く、同級生はかなりシャイ。「世界中に友達をつくる」ことが目標の私も打ち解けるのに苦労したが、やがてすてきな友達ができた。彼らの素顔を紹介したい。
(高校生記者・中川奈津子)

驚くほど親密な人間関係

私がホームステイしたのは、人口約2千人のPomarkku(ポマルック)村。留学先のPomarkun(ポマルクン) lukio(ルキオ)は、生徒約200人の中高一貫校だ。幼稚園時代から家族ぐるみの付き合いを続ける間柄の生徒が半数以上を占めている。そのため、深く信頼し合い「ありのままの自分を出せる友人関係」を築いているのが新鮮だった。

例えば、クラスの女子20人全員で、ある生徒の家でピザを食べながら映画を見ようという話になった時、本人は「私はドイツ語のレッスンがあって帰宅が遅いから、みんなで先に私のうちに行ってピザを作ってて〜」といった具合だ。留守の時以外は鍵もかけず、友達がノックをせずに上がり込んでくる。そんな家がとても多かった。

友達をつくるには…

生徒たちは、日本の高校生に似て、シャイだけど優しい。
 実は、留学したばかりのころは、同級生が冷たく見えた。話し掛けてもらえず、苦しい時期が続いた。でも、私からあいさつするようにしたり、授業のペアワーク(共同作業)の時に話し掛けたりするうちに打ち解け、友人関係が広がった。「日本のアニメが大好きで、18歳になったら絶対に旅行に行くの」と話してくれた友達もいた。後から聞くと、実はみんなは、留学生の私に興味を持っていたけれど、話し掛ける勇気がなかったそうだ。

言葉に苦労している私を見たクラスの男子は「グーグル翻訳」でフィンランド語を日本語に訳して、辞書を手作りしてくれた。私が「東日本大震災の被災者の方々に、みんなでメッセージを書きたい」と提案したら、クラスの女子全員が何時間も真剣に書く内容を考えてくれた。

夏休みに海外バイトも

フィンランドの高校生活で印象的だったのは、日本と比べ、生徒が「大人」として扱われていることだ。友達の1人はフランス語を話せることを生かして、夏休みにパリのディズニーランドでアルバイトをしていた。その間はホテルに滞在していたという。日本では考えられない国外でのアルバイトも、フィンランドでは大切な社会勉強として捉えられている。

フィンランドの若者は、良くも悪くも大人びているとも感じた。友達の誕生日や新年など、行事のたびにパーティーを開く。コテージに集まり、音楽をかけてダンスをするのだ。

一方で、外見や行動が大人っぽくても、中身は同じ高校生だと感じることも多くあった。通った学校に部活はなかったが、各自が校外でサッカーやアイスホッケーなどに打ち込んでいた。友達とテスト結果や恋の話をする姿は日本の高校生と似ていた。

打ち解けやすいとはいえないが、勇気を持ってこちらからアクションを起こせば必ず応えてくれる。困っていれば気遣いをしてくれる。こんなすてきな人たちと高校生活の1年間を過ごせたことは、私にとって大きな財産だ。

フィンランド 面積は約34万平方キロと日本の9割ほどだが、人口は約540万人と東京都の半分以下だ。公用語はフィンランド語とスウェーデン語。都市では英語も通じる。義務教育である中学卒業後、職業専門学校か高校かを選んで進学する。留学には、中川さんが利用したAFS日本協会などの留学団体のプログラムを利用する方法がある。