大学に行くか、専門学校に行くか。どちらを選ぶかで、将来の自分の姿ががらりと変わります。迷っている人はどう決断すればよいのでしょうか。20歳で学習塾を創業し、4000人以上の生徒を直接指導してきた石田勝紀さんに進路選択で悩んでいる読者からの相談に答えてもらいました。
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【お悩み】大学に行くか専門学校に行くか
大学に通うか専門学校に通うか迷っています。私の将来の夢は「あん摩マッサージ指圧師」と「鍼灸師」の国家資格を取って、マッサージ店を持つことです。夢には直結しないけど行ってみたいと思う大学と、夢に直結するマッサージの専門学校、どちらに行こうか決まりません。
考えている大学は国際教養学が学べる大学です。幼い頃から英会話をずっと習っていたので海外文化などに興味が湧き、言語や文化などさまざまなことを学びたいと思っています。
先生に相談したら、「大学行って世界を広げてから専門学校へ」と言われましたが、2回も学校に通えるほど金銭的余裕はありません。
親に相談したら、「大学に行くのは止めないけど、手に職を持った方がいい」と専門学校を勧められました。入試の時期を考えると、そろそろ決めなくてはいけない段階に入っているのですが、決まらずに悩んでいます。(こまめ・高校2年女子)
夢があることはすばらしい
こんにちは。石田勝紀です。こまめさんが、そのような夢を持っていることは実にすばらしいことです。なかなか明確な夢を心から持つ高校生はそうはいません。その段階で、今後、こまめさんは、間違いなく自分らしい人生を生きていくことができます。
親も先生も「間違っていない」
ただ夢が明確であるものの、現在の世の中の状況や周囲からのメッセージによって心が揺らぐことがあります。先生の「大学行って世界を広げてから専門学校へ」というアドバイスは、先生の立場であれば言うと思います。もしかしたら今のこまめさんの気持ちが一時的で、「もっといろいろな世界を見たり、経験したりすることで変わることもあるのではないか」と思っているかもしれません。これが大学に行くメリットになります。つまり、選択の幅を広げることができるというメリットです。
親の場合も先生と同じことが言うことが少なくないのですが、こまめさんの親御さんは「手に職」を重視しているのですね。実は、これも間違ったアドバイスではないのです。これからの時代は、誰でもできる仕事はAIに変わっていくと言われ、現にそのようになってきているので、手に職をつけておくことは大切だからです。これが専門学校に行くメリットです。
ですから、アドバイスをくれた大人たちは皆、心から善意のアドバイスをしてくれています。
「やりたい」よりも「違和感」で決める
さて、ここからが私の回答になります。実は、相談はすればするほど、ますます迷いが生じるものです。「これもいいな、あれもいいな」と。
そのようなとき、普通は、「やりたいことをやるのが選んだほうがいいよ」と言われますが、それが選べないから困っているわけで、そのような選び方は適切ではありません。そこで、選択肢がどちらでもいいかもと思っているときは次のように判断してください。
「違和感を持つ方をやめる」
驚いたかもしれませんね。違和感で判断ですから。今のような状況のときは、理屈で考えても納得できる結論は出てこないのです。それは、どちらが良いかと思い、正解探しをしてしまっているからです。
テストでも選択肢問題のときにどのように解いていますか。一つの正解の選択肢が「光っている」ときは、正しい回答を選ぶことができますね。しかし、どれも正解に見えるときは、違和感のある選択を消去していきます。いわゆる消去法というものです。すると、最も「正解に近い」選択肢が残ります。
この「正解に近い」が大切なのです。自分にとってのはっきりとした正解はないのです。正解に近いものがあるだけです。もし正解があれば、始めからそれが選べているはずです。でも、正解が見えないから困っているわけです。ですから、このようなときは、違和感を使って消去法をやってください。
損得、正解不正解で選ぶのではなく、「微妙な違和感」で。このようにして選択した結果が自分に最も合っている選択になります。
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いしだ・かつのり 教育者。教育デザインラボ代表理事。著書執筆・講演活動を通じて、学力向上のノウハウ、社会で活用できるスキルやマインドの習得法を伝える。『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』(集英社)など著書多数。