福岡県の高校2年生、福田寛季君は「5 オクターブの歌声」を持つ。普通の男声の2オクターブをはるかにしのぐ驚異の声帯で男声と女声を使い分け、ファンの輪を広げている。夢は世界を舞台に歌うことだ。(文・写真 南隆洋)

注目を集めたきっかけは、2011年9月、日本テレビ系の「スター☆ドラフト会議」への出演。「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」の男声と女声パートを1人で熱唱。プロダクションから声が掛かった。

小学5年で高音に目覚めた。中学時代、合唱では女声パートに入った。「歌手へ」と思いが高まってきた3年生の12月、声を出すと胸が痛くなる病に襲われた。卒業式で「旅立ちの日に」を歌えない。

代わりに任された指揮者の大役を果たすと、不思議にも痛みは消えた。改めて「歌える喜び」をかみしめ、高校音楽科へ。音域を調べると、ソプラノからバリトンまで実に5オクターブ。「ミラクルボイス」だった。

洋楽のほかJポップ、演歌とレパートリーは約60曲。ほとんどをネットなどで耳から覚えた。多い時には一日40曲もの曲を聞き、歌う。声帯を整えるため、炭酸飲料やコーヒー類、刺激物は一切口にせず、入浴中の発声練習を欠かさない。夢を実現するため、ノートに2018年まで国内外計34回の「コンサート予定」を記している。17年夏はニューヨークでの「サマーコンサート」だ。

テレビやラジオ、イベントなどの出演は、これまで約50回。12月23日には、北九州市のホテルに小学生から80歳代まで300人を集めて「クリスマスショー」を開いた。自ら演出し1人でトークを交え2時間余。サラ・ブライトマンから美空ひばり、秋川雅史まで多彩な21曲で楽しませた。

175㌢、55㌔の細身の体からあふれ出る熱情と感性。「ありがとうという言葉を忘れず、楽しんでいただける歌を、世界を舞台に歌い続けたい」と意欲を燃やす。