繊細なペン画で注目されるアーティストapipo(あぴぽ)さん(通信制高校2年)は、自閉スペクトラム症と場面緘黙(かんもく)を抱え、長く不登校を経験してきた。そんなapipoさんの支えになったのが創作活動。4月に個展を終えたapipoさんに、絵と歩んできた日々を聞いた。(文・黒澤真紀、写真・本人提供)

繊細なペン画を描く高校生、インスタでも話題

apipoさんは細いマーカーを使って緻密に描く作風が魅力だ。動物や植物をモチーフにしたかわいらしいオリジナルキャラクターたちは、繊細なタッチで生き生きとした表情に描かれる。

オリジナルキャラクターの「切り株くん」を描いた作品。繊細なタッチと柔らかな色合いが見る人の心をつかむ

インスタグラムには1万人以上のフォロワーがいる。まばたきを忘れるくらい集中して作品づくりをするapipoさんの様子を撮影した動画には、4万いいね以上がついたことも。「描き始めると楽しくて、早く完成させたいと夢中になるんです」

高校生として初めて埼玉県立近代美術館で個展を開催するなど、若手アーティストとして注目を集める。

音やにおいに敏感「学校がつらい」不登校続き

自閉スペクトラム症と特定の場面や状況下で話せなくなる「場面緘黙」を抱えて、長く不登校を経験してきた。

幼稚園の頃、クラスメートの前で話せない。小学校中学年の頃から「学校がつらい」と訴えるように。登校しようとするとおなかが痛くなり、息苦しくなってしまう。

幼稚園の頃のapipoさん

5年生から不登校になった。中学でも不登校が続き、高校は通信制に進学した。

母に連れられアトリエへ、才能が開花

学校に通えなくなったとき、心の支えは「絵を描くこと」だった。小さな頃からお絵描きが大好きで、模写やオリジナルキャラクターなど、何枚でも描いていた。幼稚園では掲示されたapipoさんの絵を見た人が「お母さんが描いたの?」と驚くほどの才能を持っていた。

絵を描くapipoさん。幼稚園の頃から模写をしたりオリジナルキャラクターを描いたりしていた

「絵が好きな子と一緒に描いたら刺激になるのでは」と考えた母に連れられ、小学校3年生のとき近くのアトリエで絵を習い始めた。すぐに頭角を現し、5年生でアトリエが主催する展示会に出展した。

6年生の頃からペン画を描き始めたことで画風が一変した。「キャラクターの表情をより豊かに表現するために画風を変えた」(apipoさん)と振り返るように、当初はモノトーンだったが、次第にカラフルな絵も描くようになり、絵の雰囲気も変わっていった。

「毎回楽しみ」インスタの反応で自信つけ

母は娘に自信を持ってもらいたい一心で、4年生の頃からapipoさんの作品をインスタグラムに投稿し始めた。「すてきな才能にびっくり」「毎回楽しみです」。前向きな反応や応援メッセージが届くたび「うれしかった。さらに『絵を描きたい』という気持ちが強くなりました」(apipoさん)。

apipoさん(左)と母・由香さん

中学1年生のときに地域の活動支援センターでオリジナルキャラクターが採用され、マグカップやトートバッグなどにグッズ化された。apipoさんは自分の絵をもっと広めたいと考えるようになった。「以前は『人に絵を見せるのが恥ずかしい』と感じていた。でも、今では『私の絵を見てほしい』『チャレンジしたい』という気持ちが膨らんでいます」

「人に寄り添う絵を描きたい」

「見た人に寄り添うような絵を描きたい」とapipoさん。現在は夏に京都で開催される、学生アーティストによる展覧会に出品する作品作りを進めており、「亀の神様が住んでいる滝」というテーマで、これまでで最も大きな35センチ×85センチの作品に挑戦中だ。

今の目標は「作品を世界中の人々に見てもらうこと」だ。「自分のホームページから絵を買えるようにしたり、グッズなどの販売をしたりしたい」