安倍晋三首相は6月1日、来年4月に予定していた消費税率10%への引き上げを2019年10月まで延期すると表明した。12年8月に再増税を決めて以来、2度目の延期となる。

 Q  最初の延期はいつ?

民主党政権時代の12年8月に民主、自民、公明の3党は税率を14年4月に5%から8%に、15年10月に10%に上げることで合意し消費税増税法が成立した。しかし安倍首相は14年11月、「10%に増税すればデフレ脱却が危うくなる」として再増税を17年4月に先送りしていた。

 Q  再延期の理由は?

再延期の理由について安倍首相は「世界経済のリスクを正しく認識し、新たな危機に陥ることを回避するべきだ」としている。だが、経済情勢については「リーマン・ショックや大震災のような事態は起きていない」と指摘。従来の再延期要件に該当しないとの認識で、野党などは「政治家としての公約はどうなったのか」と批判した。

 Q  家計への影響は?

再延期によって税率引き上げによる負担増は先送りされる。消費税が10%になると、1世帯平均で年間4万6千円の負担増、中でも出費の多い40歳代と50歳代の世帯では負担増が5万円を超えるという試算もあった。

一方、増税分で予定されていた社会保障の充実策に黄信号がともった。

 Q  社会保障はどうなる?

少子高齢化による社会保障の負担増を若い世代に先送りしないため、民主、自民、公明の3党は、消費税増税法を柱とする社会保障と税の一体改革関連法を成立させた。増収分の一部を医療や介護、年金、子育てなど社会保障の充実に活用、安定財源の確保と財政再建を同時に達成することが狙いだった。

消費税の引き上げ再延期で「社会保障と税の一体改革」の理念は遠のいたといえる。中でも、子育て分野には計7千億円を見込んでいたが、8%で確保できるのは6千億円にとどまる。待機児童の解消は、安倍政権が掲げる「1億総活躍社会」の柱の一つだが、財源確保に向けた予算編成は難航しそうだ。

 

MEMO  リーマン・ショック 2008年9月、米証券大手のリーマン・ブラザーズが経営破綻、米国の住宅ローンに関連した金融商品などが大幅下落し金融危機が深刻化した。これをきっかけに世界的に株価が暴落し、生産や雇用などの実体経済も大打撃を受け、世界同時不況に陥った。