2024年度入試での私立大学の志望動向を河合塾教育研究開発本部で主席研究員を務める近藤治さんに聞いた。模試では一部の難関大学の志望者が減っており、「非常に狙い目」とみられる大学もあるという。(西健太郎)

2024年は18歳人口が前年より3万4千人減り、24年度大学志願者も前年(65万1千人)より減少が見込まれる(河合塾提供)

私立大専願者は「共通テスト離れ」

河合塾が11月に実施した共通テスト摸試(第3回全統共通テスト摸試)受験者の志望大学をみると、私立大学志望者は対前年96%、国公立大学を受けない私立大学専願者に限ると前年の89%だった。受験生の減少に加え、大学入学共通テストの出題傾向がセンター試験から大きく変わり、私立大学の一般選抜とは対策を兼ねにくいという印象が広がり、私立大学専願者の「共通テスト離れ」がみられるという。実際、今年の共通テストの出願者は32年ぶりに50万人を割った。

私立大学の志望状況(河合塾が2023年11月に実施した「第3回全統共通テスト摸試」志望者の集計による)

私立大入試「一般方式」は減少目立つ

大学群ごとに志望動向をみると、共通テスト受験が不要な「一般方式」の志望者数の減少が目立つ。首都圏の「早慶上理」(早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学、東京理科大学)、「MARCH」(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)、近畿圏の「産近甲龍」(京都産業大学、近畿大学、甲南大学、龍谷大学)などに分類された大学群では、「一般方式」の志望者数が前年より顕著に減っている。私立大学専願者が共通テスト模試の受験自体をとりやめていることも考えられ、実際の出願者数は異なる傾向となる可能性はあるものの、河合塾の近藤さんは「安全志向」から難関私立大学の受験を経験する志望者が少なくないことを指摘する。「模試の志望者数を見る限りは、これらの大学の一般方式は『非常に狙い目』と言っていい。果敢にチャレンジする価値があります」

私立大「共通テスト方式」は志願者増、国公立大志望者が多く併願

一方、共通テストの点数などで選抜される「共通テスト方式」の志望動向では、様相が一変する。首都圏の「早慶上理」「MARCH」「日東駒専」(日本大学、東洋大学、駒澤大学、専修大学)や近畿圏の「関関同立」(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)などの大学群で志望者が前年より増えている。近藤さんによると、国公立大学志望者が私立大学の「共通テスト方式」の併願に積極的である可能性があるという。

「共通テスト方式」は受験料が「一般方式」より安く、大学ごとの試験を受けなくてよいメリットもある。一方で合否が予測しにくく「ギャンブル性が強い」面もあるので注意が必要だ。「募集人員は比較的少なく、志願者が事前の予測より大きく増えたり減ったりすることもある。合格者数をどのくらい出すのかも年によって変わる。予備校としても合否のボーダーラインの設定が難しい」。そのため、私立大学専願者でも、国公立大学志願者の併願先としても、確実に合格を見通せる入試方式ではないことはふまえておくことが必要という。

近藤治さん 学校法人河合塾 教育研究開発本部主席研究員。河合塾入塾後、教育情報分析部門で大学入試動向分析や進学情報誌の編集に携わる。教育情報部部長、中部本部長などを経て、2021年4月から現職。情報発信や講演も多数実施。