吉田拓馬さん(埼玉・東野高校3年)の「ヒトツマミ」を紹介します。大きな手の影が男子高校生に迫り、今にも「つままれそう」な様子を捉えたこの作品は、第47回全国高校総合文化祭(2023かごしま総文)の写真部門に出品されました。どのように撮影したのか聞きました。(写真・学校提供)
「光と影」をテーマに撮影
―作品のテーマを教えてください。
私が所属する写真部は「今、この瞬間を永遠に」というテーマを掲げて日々活動しています。今回の作品は「光と影」のコントラストを大事にして、何十回、何百回とシャッターを切り試行錯誤を重ねました。
特に「影」をモチーフとして、さまざまな被写体の「光」とのバランスや角度などを探っていき、動く「影」が迫ってくる瞬間、慌てふためく人間の表情、その一瞬にシャッターを切り、収めました。
スマホを照明代わりに
―こだわったり工夫したりしたポイントはどこですか?
最高の「光と影」のバランスを見つけながら、巨大なものが人間をひとつまみにすることを表現しました。光を当てる位置と角度を考えながら、写真撮影用の照明の代わりに2台のスマートフォンを使用。「影」が大きくはっきりと映るように、トライ&エラーを繰り返しました。
―難しかった点や苦労した点を教えてください。
撮影は放課後の限られた時間の中で行いました。最も苦労したのは「光と影」のバランスを取るための撮影場所を見つけることです。部員みんなで協力し、校舎中を歩き回りシャッターを切りました。なかなか納得する場所を見つけることができず諦めかけたとき、偶然手遊びをしながら休憩した場所で、理想的な場所を発見できました。
常に「自分と対話」
―制作中、印象に残っているエピソードはありますか?
今回の作品は私だけでは絶対に撮影できませんでした。撮影場所を見つけるために一緒に走り回ってくれた仲間、快くモデルを引き受けてくれた部長、技術指導をしていただいた顧問の先生のおかげです。特にモデルの驚いた表情を作り出すために部員全員で考え、それぞれの表情を出し合った結果、最後は変顔大会になってしまったことは、私にとって忘れられない大事な思い出の一ページです。
―よい作品を作るためのコツを教えてください。
1枚の写真を通してどんなストーリーを紡ぎ出したいのか、常に内なる自分と撮影者である自分との対話を通してシャッターを切ることです。技術は後からついてきます。まずは「1日1撮」を心掛けることをオススメします。