「つらいし、不安で、心配」。旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)のタレントを追いかける高校生から悲痛な声が高校生新聞編集部に寄せられた。ジャニー喜多川氏の性加害問題に端を発した報道が後を絶たない。この問題を扱った記事や、SNSで飛び交うタレントへの批判を目の当たりにして、傷つくファンはどうすればよいのか。(記事に登場する高校生は全員仮名)

たたく人をSNSで見てつらい

もりよさん(高校3年)は、約1年半前から「なにわ男子」を応援している。中でも推しているのは長尾謙杜さんで、CDやグッズを買ったり、コンサートに行ったりと日々「推し活」を楽しんでいる。

なにわ男子のコンサートに行った際の写真(もりよさん提供)

旧ジャニーズに関する報道を見るたびに、もりよさんは自分自身の支えになっている大事なものを批判されている気がして、つらい気持ちに襲われる。

「こうしたニュース記事をネタにして“たたく”人たちがたくさんいるんです。性加害はもちろん問題なので、きちんと事実を解明する必要があると思います。でも、X(旧Twitter)では記事のタイトルにタレントの名前が入っているだけでたたく人もいて、目に入るのがつらい」

「好き」を否定される気分

なにわ男子の道枝駿佑さんを推すノノさん(仮名、高校2年)は、「(旧)ジャニーズを解体しろ、という世間の風潮は、自分の好きなものを否定されているようでつらい」と心を痛める。

根拠のないうわさがX(旧Twitter)ではまん延しており、それを信じている人を目にしては不快な気持ちになる。テレビで「タレントにも罪がある」という発言をするコメンテーターに憤り、旧ジャニーズに関する報道ばかりをする番組にも違和感があるという。

「でも、タレント本人が誹謗(ひぼう)中傷のコメントを見てしまうことが何よりも心配です」と、悲痛な声で訴えた。

今後どうなるか不安でいっぱい

嵐の二宮和也さんを推している奈月さん(仮名、高校2年)は、クラスメートと旧ジャニーズ事務所に関する話題が出しにくくなったという。「今までは『この曲聞いてみて!』って話してたんですけど、今はファン以外の人の前だと話題に出しにくいです。タレント本人に罪はないので、どうしていいか分かりません」とため息をつく。

現在、活動休止中の嵐。二宮さんは今年10月、事務所から独立した。「今までと体制が大きく変わってしまってしまいました。嵐の活動再開がどうなるか分からない不安でいっぱいです」

嵐のコンサートチケットとグッズ(奈月さん提供)

距離を置いて心を守る

「推し」が批判される状況がつらい。そんなとき、どうやって心を守ればよいのだろう。臨床心理士でスクールカウンセラーを務める大倉智徳さんは、SNSから距離を置くことを勧める。「SNSは相手の反応が見えないが故に、安易な気持ちで意見を述べてしまう面があるため、今回の件に限らず、さまざまな方が傷ついていることが現実だと思います」

メディアについても、発信される内容は視聴者の関心をひくものに偏っていることもある。「不特定多数の意見が述べられる媒体からは距離を置き、好きなほうだけを見て過ごす時間を過ごすことを、いまはおすすめします」

身近に支えになる人を見つけて

そもそも「推し」を応援することは、臨床心理学から見てどんなメリットがあるのか。「つらいことがあっても、『自分には推しがいる』と気持ちを切り替えられたり、『推し活のために頑張って乗り越えよう』と思えたりすると、その人の生活にとってプラスになります」

だが、推しに思い入れが強すぎると逆につらくなるリスクも。大倉さんは推しだけでなく、身近に「好きな人・大切な人」がいることも、大切な要素だという。

「別に恋愛対象でなくても構いません。『友人として好き』という存在が日常生活にいるかどうかも大事。肯定的な気持ちを『身近な人』にも、アイドルのように『近づきにくい存在』にも持っていることが、心においてよいバランスが取れていると言えるように思います」

編集部にあなたの声を聞かせてください

記事を読んで感じたことをLINE公式アカウント「高校生新聞編集部」に送ってください。

メッセージの最初に原稿のテーマ、学年・性別(さしつかえなければ)・ペンネーム(アカウント名は掲載しません)を明記してください。

読者の方に読みやすく、分かりやすくするために、投稿の趣旨を変えない範囲で短くしたり、表現や表記を添削させていただく場合があります。掲載できない場合もあります。記事で紹介させていただく場合は編集部から連絡します。