「必要な時に、生理用ナプキンがない」。さまざまな事情で生理用品が手元になく、焦った経験のある人は少なくない。そんな状況を変えるべく、「高校のトイレに生理用品を設置したい!」と立ち上がった女子高校生がいる。(文・椎木里咲、写真・本人提供)

「学校のトイレにナプキンを」

澤田まりあさん、山形萌花(もか)さん、山領珊南(やまりょう・さんな)さん(ともに岡山後楽館高校3年)は、高校1年生のときに「生理革命委員会」という団体を結成し、「岡山県の公立高校のトイレに誰でも無料で使えるナプキンを設置する」ことを目標に活動している。これまでクラウドファンディングや署名活動を行ってきた。

生理革命員会の3人。左から山形さん、山領さん、澤田さん

「私、学校のトイレにナプキンを置きたいんよね」。結成のきっかけは、山領さんの一言だった。

ジェンダー問題に興味があった3人は、学校の「総合的な探究の時間」の授業で調べ学習を進めていた。「祖母に『生涯に使う生理用品って30万円から40万円かかるんだよ』と聞き、こんなに負担がかかるんだと思いました。私もナプキンを忘れて友達に借りることがあって……。トイレにあったら自分だけじゃなく、周りの友達も絶対に助かるだろうなって」(山領さん)

提案を聞いた澤田さんと山形さんは、「率直にいいなと思いました」とすぐに快諾。2年生から生理革命委員会の活動を本格的に始めた。

「生理の貧困」って何だろう?

まず3人は「生理の貧困」に注目。そもそも、どんな状態を指すのか調べたところ、アメリカ医学女性協会が定めた「生理に関する衛生的な手段や教育が十分に行き届いていない状態」という定義を知った。

経済的な事情で生理用品が手に入らないことはもちろん、「必要なときにナプキンがない状態、生理に関する知識が足りない状態、生理について話しにくい雰囲気も『生理の貧困』なんです」(澤田さん)。

経済的な理由で交換頻度減らす生徒も

昨年11月、全校生徒に「生理の貧困」に関するアンケートを行い、333人から回答を得た。生理経験の有無で回答欄を分け、男子生徒やまだ生理が来ていない女子生徒からも回答を募った。

生理経験がある人に向けた「学校に生理用品を持ってきていなくて困ったことがありますか?」という質問には、75.8%が「ある」と答えた。「経済的な理由で、生理用品を交換する頻度を減らしたことはありますか?」という質問には9.5%が「ある」と回答した。

さらに、「学校の保健室でナプキンをもらうことができますが知っていましたか?」という質問では、生理経験のある1年生の3割以上が「知らなかった」と回答した。

トイレにナプキン設置「利用しやすい」

保健室でも生理用ナプキンはもらえる。だが、予期せず生理になってしまった場合、距離のある保健室に向かうには、授業と授業の合間の休憩時間は短いうえに、衣類が経血で汚れる不安を抱えることになる。

学校のトイレに生理用ナプキンを設置する実証実験を行った

昨年11月、学校の女子トイレに生理用ナプキンを設置する実験を行ったところ、1カ月の使用枚数は506枚だった。10月に保健室で提供された生理用ナプキンは20枚だったため、使用枚数は約25倍だった。実証実験後におこなったアンケートでは「トイレにある方が利用しやすい」と答えた生徒は95%を超えた。

実証実験に向け準備進める

活動を学校外にも広げた。3人は県内の公立高校の女子トイレへの生理用品の設置に向け、まずは希望する県内の高校で実証実験を行うことを目指した。そのために、昨年12月から生理用品を賄うためのクラウドファンディングとオンラインによる署名活動を実施。今年6月までに200万円以上の支援金と、約400人からの署名を集めた。署名は、生理用ナプキン設置に関する要望とともにを岡山県教育委員会や議会に提出した。

署名をしてくれたのは、3人の活動に興味を持った年配の方が多かったという。受け取った担当者からは「しっかり考えていきたい」というコメントをもらった。8月には実証実験への参加を希望した22校に説明会を実施。そのうち4校から参加の申し込みがあり、現在実施に向けて準備を進めている。

「最終的には全国の高校のトイレにナプキンを置いてほしい。そして生理について話しやすい社会になっていってほしい」(澤田さん)。社会の生理に対する認識を変える。そんな「革命」を起こすため、3人はまだまだ走り続ける。